鎌倉美術連盟の代表に就任した 村田 佳代子さん 大町在住 71歳
「芸術は自身の体験から」
○…市内で活動する絵画・版画の教室や団体などが加盟する鎌倉美術連盟。創立時から参加し、4月12日に会長に就任した。「鎌倉での美術教育の流れを後世に伝えていきたい。創立20周年にあたる今年は記念の映画上映会とバスツアーを企画しているので、まずはそれらを成功させなくては」と穏やかに語る。
○…東京都出身。家業を継いで医師になろうと勉強に励んだが、高校生のとき参加した病院実習で挫折を味わうことに。「生々しい症例を見て貧血を起こしてしまって。このまま医者を目指すのは無理と思った」。改めて進路に悩み、好きだった美術の道を選択。相談した担任から紹介されたキュレーターを目指して聖心女子大学に進学し、神奈川県立近代美術館初代館長だった村田良策氏の下で西洋美術史を専攻した。「先生の学問を受け継ぎたい、と必死に勉強した」と振り返る。ある時村田氏から息子を紹介され、卒業後すぐに結婚。義父の引退後は大学で教鞭をとっていたという。
○…長女を出産後、その成長の記録を絵にしたことで作品制作が始まった。特に評価が高いのは、禁教時代のキリスト教殉教者をテーマにしたもの。岩手県から沖縄県まで取材に赴き、126人を描いたという。こうした作品群はフランスやイタリアなどの国際展で大賞に選ばれ、2005年には紺綬褒章を受章。国内外で個展も多く開催している。「体験などを通じて自身の血と肉になった事柄を描く、それが私の美術だと思うの」と笑う。
○…「本物の美術に触れる教育が不足している」と考えていた義父の遺志を継いだ「村田良策記念アトリエM」を主宰するほか、市の絵画教室講師や風致保存会理事など幅広く活動している。「『忙しい』って心を亡くすって書くでしょ。でも一つひとつ心をこめて取り組むと気持ちが切り替えられて、何事も楽しめる。だから忙しいと思ったことはないの」とほほえんだ。