バラ売り花火におもちゃ、文具――。80年以上にわたって材木座の子どもたちに愛された「アメリカヤ」が6月、3年半ぶりに営業を再開した。3代目店主としてオープンを決めた進藤弘さん(57)は「多くの人に『この店が復活してうれしい』と言ってもらえた。再開して良かった」と初めての夏を振り返る。
材木座海岸に向かう道沿いにある「アメリカヤ」は、バラ売り花火やおもちゃ、文具を取り扱う店として1926年に進藤さんの祖父・義さんがオープンさせた。地元の子どもたちに80年以上親しまれてきたが、2011年、進藤さんの母で2代目店主・和子さんが病に倒れ、閉店した。「死ぬまで店を続けたい」と言っていた和子さんだったが、その想いは叶うことなく昨年8月に他界。進藤さんは店の片付けを始めたという。
しかし周囲から「あの店が無くなるのは淋しい」「協力するから再建して欲しい」といった声が寄せられるようになった。進藤さんは「こんなに期待されているなら、もう一度店を開けてみよう」と友人3人と営業再開に向け動き出した。
祭りに合わせ再開
アメリカヤの主力商品がバラ売り花火であることから、6月に開催される五所神社例大祭に合わせて再開することを決定。4月から、店内の清掃や看板の張替えに着手した。
保存状態が良かった花火やおもちゃはそのまま店頭に並べることに。新商品として、オリジナルTシャツや手作りアクセサリーなども用意した。
こうして6月13日、40種類以上の花火が店頭に並び、かつての風情そのままに再オープンを果たす。すると近所の人が続々と来店したという。「『再開を待っていた』『毎年ここで花火を買うのを楽しみにしていた』など、思い出話をたくさんしてくれた。それがうれしくて」と進藤さん。また、開業当時のままの建物はほとんど手を加えずに使用したため「建物は丈夫だけれどエアコンがなくて。真夏の店番はかなり参りました」と笑う。
「地域の憩いの場に」
「アメリカヤ」という店名は、祖父・義さんが米国・フォードの工場で整備士をしていたことに由来する。義さんは帰国後に地元で自動車整備店を営もうとしていたが、娘が産まれたことをきっかけに「子どもが来ても安全な場所にしたい」と花火とおもちゃの店に方向転換したという。
1955年ごろに店を継いだ和子さんは商店街の人付きあいを大切にしながら、50年以上店を守ってきた。そんなレトロな雰囲気が残る店内は現在、3代目店主の進藤さんの趣味である洋楽がBGMとして彩りを添えている。
「90周年となる来年は、何かイベントを企画したい」と進藤さん。「子どものわずかなお小遣いでも買える花火や日用品の文具など、近所の人に求められるものを提供し、憩いの場として店を続けていきたい」と今後について語った。
営業時間は午前10時から午後6時。祝日を除く月曜・水曜定休。問合せは【電話】0467・23・2846、材木座5の13の19へ。
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