来年3月末に閉館し、建物が解体される方針だった鶴岡八幡宮境内の県立近代美術館・鎌倉館の本館棟が保存される見通しとなった。9月10日、県教委が明らかにした。保存を訴えていた市民は「文化的背景に配慮して活用して欲しい」と話す。
県教育委員会は9月10日の県議会本会議で、県立近代美術館・鎌倉館の本館棟を保存する方針を明らかにした。新館棟と学芸員棟は、老朽化が進んでいることから、取り壊すという。本館棟は耐震工事が必要なことから今後、経費負担などについて県と八幡宮側とで調整を行っていくとしている。八幡宮は「文化的施設として多くの方が利用できる場になれば」と話す。
解体から保存へ
同館は1951年、日本で初めての公立近代美術館として建設された。建物の設計はモダニズム建築の巨匠ル・コルビュジエの弟子の建築家坂倉準三。「戦後モダニズム建築の傑作」と高く評価されている。
そんな同館について県は昨年、敷地を有する鶴岡八幡宮との借地契約が2016年3月で満了することを受けて閉館する方針を示していた。さらに、「返還の際には更地にする」という契約だったため、建物が存続の危機に瀕していた。
閉館と建物の撤去方針を耳にした長谷在住の横松佐智子さんら市民有志3人は「近代建築の傑作である同館は保存すべき」と昨年5月から署名活動を開始。同6月末までに1万6千筆以上を集め、8月から10月にかけて、県や鶴岡八幡宮など5カ所に署名と要望書を提出した。
その後、県と鶴岡八幡宮は建物の現状把握と、保全の可能性についての調査を行い、今年1月、調査結果を発表。本館の現状について「現在の耐震基準を下回っているものの、既存部分のコンクリートや鉄骨等は建設当時の強度を保持している」とした。その上で、現在の耐震基準に適合させるため、柱脚や地下梁の補強により、「地下遺構を損なわずに補強が可能」と結論付けていた。
今回の決定について、保存活動を行った横松さんは「保存が決まったことは良かった。後は文化的背景を考慮して活用について検討して欲しい」と話している。
最後の展覧会も
同館は10月17日(土)から来年1月31日(日)まで、最後の展覧会「『鎌倉近代美術館』誕生」を開催する。同館草創期の変遷を様々な資料で追うことができる。問合せは【電話】0467・22・5000へ。
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