鎌倉のとっておき〈第17回〉 鎌倉と自然〜和賀江島〜
鎌倉は三方を山、南を海が取り囲んでおり、その自然と歴史・文化遺産が一体となって魅力的な景観を作り出している。今回紹介する材木座の和賀江島は、鎌倉時代に築港された現存する日本最古の港湾遺跡である(国の史跡に指定)。
その和賀江島からの海の眺めを、鎌倉時代の仁治3年(1242年)に京都より下向した人が、東関紀行という紀行文にこう記している。
「かくしつつ明かし暮らすほどに、つれづれもなぐさむやとて、和賀江の築島、三浦のみ崎などいふ浦々を行きて見れば、海上の眺望、哀れをもよほして、来し方に名高く面白き所々にもおとらず覚ゆ」
簡略して訳すと、和賀江島からの景色がよく趣(または情緒)を感じる、という意味である。古語の「哀れ」は現在の悲しいという意味以外に、趣のある・情緒があるなどを表す場合がある。この和賀江島からの景色の素晴らしさは今も変わらず、晴天時には富士山や伊豆半島も一望することができる。
現在の和賀江島は風化の影響により石が崩れ、潮が満ちると海に沈んでしまうが、潮が引くと材木座海岸とつながり渡る事ができる。
そこにできる「潮だまり」は子どもたちの格好の遊び場で、今の季節、休日ともなれば多くの家族連れが訪れる。
また、このあたりでは古い陶磁器の破片がよく出てくることで有名で、史料には、停泊中の船が暴風雨等で大破したという記事もある。「その時の積荷だったのかもしれない」などと考えるだけでも、歴史を身近に感じることができる場所なのだ。 浮田 定則
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