鎌倉市と鎌倉平和推進実行委員会はこのほど、戦争体験証言DVD「広島被爆体験〜太陽が落ちた日〜」を制作し、市立小・中学校と各図書館に配架した。4作目となる今回は、広島市出身の橋爪文(ぶん)さんが自らの被爆体験を語った。40年近く「語り部」活動を続けてきた橋爪さんは「悲惨な戦争を二度と繰り返さないよう、大人から子どもまで、多くの人たちに見てほしい」と話している。
鎌倉平和推進実行委員会は公募市民により組織された団体で、2000年から、市内の小・中学生を対象に戦争体験者らによる「出前講話”平和”」を開催している。
語り部の高齢化が顕著になってきたため「このままでは貴重な証言が次世代に受け継がれない」として、13年から証言DVDの制作を開始。これまで「沖縄戦体験編」「長崎被爆体験編」「横浜大空襲体験編」を市内の小・中学校や各図書館に配架している。
14歳で被爆
今回、証言を記録した橋爪文さん(町田市在住、86)は1931年、広島市で生まれた。
45年夏、中学生ながら学徒動員により広島貯金支局に勤務していた橋爪さん。8月6日もいつものように出勤し、爆心地から南に1・5キロの場所にあった同支局で被爆した。
爆発の瞬間を「大きな窓を背にした係長に配給の代金を渡そうとした時だった。七色の虹のような異様な閃光が目に飛び込んできて、太陽が落ちたのかと思った」と振り返る。
重症を負いながらもなんとか生き延びた橋爪さん。その後は結婚して40年ほど前に鎌倉市に移り住み、3人の息子を育てていた。
そうしたある日、次男が通う小学校の教諭から、「子どもたちに戦争体験を話してほしい」と頼まれたことをきっかけに、語り部としての活動を開始した。
これまでに被爆体験に基づいた詩やエッセイ、合唱曲の作詞など数多くの作品を発表しているほか、外国でも「反核・平和海外ひとり行脚」という草の根活動を実施。同委員会が実施する「出前講話」にも02年から10年にかけてほぼ毎年参加してきたが、体力的な負担もあり現在は講演活動を控えているという。
DVDには被爆直後に助けてくれた同僚や知人とのやり取りのほか、「人間の姿を失った人たち」の様子、焼野原になった街の状況について、ときどき言葉を詰まらせながら語る様子が収められている。橋爪さんは「こうした形で証言を残すことは大切。多くの人に見ていただいて、鎌倉の教育に役立ててほしい」と話している。
DVDは小・中学校の総合教育等で活用されるほか、各図書館と市文化人権推進課で貸し出している。問い合わせは【電話】0467・61・3870同課へ。
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