優れた技術や知識を有し、各分野の第一人者として活躍する技能者を県が表彰する「神奈川の名工」が先月、発表された。鎌倉市から選出されたのは笛田にある植豊造園代表の徳光泉さん(65)。徳光さんは長年寺院の庭園造りを手がけているなか、「竹寺」として知られる報国寺での竹林管理が評価された。
アルバイトがきっかけ
鎌倉で生まれ育った徳光さんは高校卒業後、サッシを製作する会社に就職し、浜松にあった工場で働き始めた。しかし、「単純作業の繰り返しは肌に合わなかった」と3カ月で退職。地元に戻り、たまたま見つけた造園会社でアルバイトを始めたという。
すると「自然が相手だし、創意工夫も求められる。大変だけどやりがいを感じました」と造園の仕事にどんどんのめり込んでいった。この道で生きていくことを決意し、先代が約50年前に立ち上げた植豊造園へ入社。技術を磨き続け、30歳の時に屋号を継いだ。
「先代の時代からお付き合いさせていただいている寺社もある。垣根や石組み、庭園の維持管理だけでなく依頼があれば縁の下から天井まで、できることは何でもやります」とそのポリシーを語る。
海外からの反応「誇り」
そんな寺社のひとつに「竹寺」として知られる報国寺がある。孟宗竹約2千本を有する同寺。竹の中でも特に成長が早い種類として知られ、ピーク時には1日1m以上伸びることから、庭園での維持管理が難しいとされる。
徳光さんは関連書籍を読み漁り、先輩たちから実践的なアドバイスももらいながら堆肥を配合したり、間伐方法を工夫するなどして独自の管理手法を確立してきた。「密集しすぎてはいけないし、スカスカでもみっともない。台風や雪など、不測の事態で倒れることもあるのでいつも気を使っています」。
そんな努力と工夫の甲斐あって、同寺の竹林は日本だけでなく世界中の観光客から賞賛を浴びている。「『わざわざ訪れるべき観光地』としてミシュラン・ガイドブックで3つ星をいただいた時は嬉しかった。それと同時に、これまで以上に綺麗にしなければと背筋の伸びる思いでした」。
この仕事を次世代へ
後進の育成にも力を入れる。鎌倉造園組合で今年3月まで8年間にわたって組合長を務めていたほか、講習等も積極的に行ってきた。2人の息子のうち、次男は同じ造園の道に。「自分次第で色々なことができるうえ、人に見てもらえる。こんな面白い仕事は他にありません」と笑顔で語った。
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