「カマキン」最後の日々を見つめて 扇ガ谷出身の学芸員・松尾さん
鶴岡八幡宮との借地契約の満了などにより、1月31日で閉館する県立近代美術館・鎌倉館。「カマキン」の愛称で市民に親しまれた同館での最後の日々を、特別な思いで過ごしている人がいる。学芸員の松尾子水樹(こなぎ)さんは、地元扇ガ谷の出身。閉館を知りながら6年前に着任した松尾さんに話を聞いた。
昨年11月、同館では「カマキンとの思い出の写真」を市民から募り、約20枚を展示した。
その中の一枚に、同館前に設置されていた彫刻作品をバックにした親子の写真があった(左下)。
この少女こそ、当時3歳だった松尾さんだ。扇ガ谷で生まれ育った松尾さんにとって、同館は常に身近な場所だった。「幼い頃は散歩コース。初詣でや七五三のお祝いのときには、必ずここで写真を撮っていました」と振り返る。
6年前カマキンへ
「もともと美術館や劇場の空間が好きだった」という松尾さんは、大学卒業後、学芸員の道に進んだ。県内の美術館などでの勤務を経て、同館で働くようになったのは6年前。「きっかけはたまたま学芸員の募集を見たことでしたが、敷地が返還される予定だということは知っていました。だからこそ、内部から思い出の地の行く末を見守りたかった」と話す。
美術館の姿感じて
松尾さんは入職以来、広報担当の非常勤学芸員として働く。同館では1月に入っても中学生の職場体験を受け入れているが、その理由について「建物は存続しますが、美術館としてのカマキンの姿を最後まで身近に感じて欲しい」と明かす。
また館内には現在、来館者に同館へのメッセージを書いてもらうコーナーを設けている。そこには「学芸員さんの授業で教えてもらった作品の実物を見て『でかっ!』と思った」など子どもたちからのユニークコメントも。「地元小学校への出張授業などでコツコツやってきたことが、こうして記憶に残っているのはうれしいですね」と微笑む。
「1月は例年の2倍以上の人出」と閉館を惜しむ人々でにぎわう同館。松尾さんは「今は忙しさでまぎれていますが、閉館後に展示している絵画や彫刻を葉山館や別館へ移したあとの姿を想像すると、複雑な気持ちになります」という。「ここがもぬけの殻になって、新館棟が解体された後に、学芸員である私たちはカマキンの喪失を目の当たりにするのでしょうね」。そういうと、愛おしそうに建物を見つめた。
最後の展覧会開催中
同館最後の展覧会「鎌倉からはじまった。PART3『鎌倉近代美術館』誕生」が1月31日(日)まで開催されている。1951年から65年までの15年間に焦点をあてた作品が展示されるほか、鎌倉館の変遷を図面や写真、映像資料で紹介する。
また、これまで開催した展覧会をまとめた『鎌倉からはじまった。「神奈川県近代美術館鎌倉」の65年』(288ページ、税別2800円)を販売中で、同館ミュージアムショップなどで購入することができる。
午前9時から午後5時まで(入館は4時30分まで)。月曜休館。問合せは【電話】0467・22・5000へ。
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