鎌倉のとっておき〈第24回〉 カフェと鎌倉
鎌倉文士の影響からか、鎌倉にはそれぞれに趣向を凝らした数多くのカフェ(喫茶店)がある。地元の人々はもちろん、鎌倉を訪れる旅行者にも憩いとやすらぎの場を提供している。
今や我々の生活に欠かせない「喫茶」の習慣。歴史を紐解けば、この習慣の発信源はまさに中世鎌倉であった。
壽福寺(市内扇ガ谷)の開山であり、日本における臨済宗の祖・栄西は12世紀後半、当時の宋(中国)に2度渡り、天台密教や禅宗を究めるとともに、「茶」に関する多くの知識を携えて帰国した。
そして栄西は同時に、宋から茶の種(苗)を持ち帰ったとされている。
鎌倉幕府が編纂した歴史書『吾妻鏡』にはこれに関連した興味深いエピソードがある。
二日酔いで苦しんでいた当時の将軍・源実朝の治療に、薬と称して「茶」を勧めたところ無事に回復したと記されているのだ。
栄西はその後、源実朝に「茶」の効用をしたためた『喫茶養生記』を献上した。こうしたことを契機に、禅宗とともに養生や健康増進のための薬として、「喫茶」の習慣が鎌倉から日本各地へ広まっていったという。
くだんの『喫茶養生記』は、源頼朝の父・義朝の屋敷跡とされる壽福寺に伝わり国の重要文化財として大切に所蔵されていた。現在は鎌倉国宝館に寄託されている。
鎌倉は昔も今も、訪れるあまたの人々を「喫茶」の効用で癒してくれる、やさしくてトレンディーな街なのである。
石塚裕之
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