茅ヶ崎市温室園芸組合の新組合長に就任した 新倉 喜一さん 西久保在住 58歳
準備をもって諦めず
○…ラン科の大輪、ピンクのカトレアが咲き並ぶ温室。「少し目を離すと『どこ行ってたの?』と訴えてくるのを感じます。花は女性。彼女たちに出会えて良かった」とにっこり。「世界ラン展のようなデコレーションで茅ヶ崎の花の魅力を発信できたらいいよね。今からできることは何だろう」。市内14軒からなる温室園芸組合の新組合長として、意欲を語る。
○…西久保の野菜農家に生まれ鶴嶺小・中、逗子開成高を経て東京農業大畜産学科へ進学した。「牛など大きな動物が好きだった」と話す青年時代。群馬の畜産会社に就職したが、処分される牛や豚の姿に「可哀想で耐えられなくて。要は、自分は甘かったんだね」と振り返る。帰郷後、大学時代に熱中していたビオラを再開。楽器に触れると、先輩の卒業公演で贈った大輪の花束をふと思い出した。その時だった。「あの華麗なランの花をつくってみたい」
○…右も左もわからない園芸を教えてくれたのは千葉の師匠だった。身の回りの世話から執筆の手伝いなど、師匠宅での修業生活は3年間。厳しさで知られ、咳一つしようものなら「君は風邪をひく暇があるのか」と皮肉が飛ぶことも。しかし、園芸技術は間違いなかった。「植え替え時にピンセットを使用するなど、全部あの時学んだことを続けている。厳しくもやっぱり先生が一番」と、32年間使い続けて先が擦り減ったピンセットを見せて笑った。
○…両親がカトレア用の温室として畑1つを提供してくれてから早30年。130坪から始めた温室は、今では430坪まで広がりラン業界にいた妻と一緒に作業を進める。「3人の子どもには『準備をもって諦めず』と話しています。失敗や失望するのは、物事の準備不足が原因。物事は準備で決まる」。趣味は48歳から始めた合気道。息子と通い、現在は3段を取得している。カトレアの花弁のように、厳かでしっかりとした印象が残った。
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