大津波発生時の一時退避先となる津波避難ビルについて、市はビル所有者、自治会の3者による協定締結を進めている。取り組みから約1年、民間の対象施設は31棟、公共施設を含め計39カ所(6月26日現在)が避難ビルの指定を受けた。市防災危機管理課では、棟数の増加に向けて対象ビルとの交渉に腐心している。
有事に備え1棟でも多く
津波避難ビルは、1981年の新耐震設計基準を満たし、3階以上の階に退避可能な共用スペースがある鉄筋コンクリート、または鉄骨鉄筋コンクリート造であることなどが条件となる。
同課では、なでしこ、花水、港地区を対象に、約400棟のビルで現地調査を実施。条件に該当する288棟について、昨年7月ごろから課内の職員が交渉してきた。
8月には県内初の公募制を導入したものの、問い合わせのあったほとんどのビルが条件を満たしておらず、協定締結は1棟のみ。公募に関して、津波避難ビルの指定は行政主導で行うべきという声もあり、同課は「公募はあくまでも、職員による直接的な行動を補完するための措置」とした上で「市は何もしないというわけではなかったが、説明が足らず誤解を招いてしまった」と釈明する。
指定ビルの数が思うように増えない原因は、対象ビルの8割がマンションであることも関係しているという。「管理組合の理事会や総会で承認を得る必要があるため、回答まで数カ月から半年を要することもある」と、交渉が長期にわたるケースが多い。また「自分のビルだけに避難者が殺到するのでは」という所有者の不安や、マンション入居者のプライバシーに関わる問題も無視できない。
一方で、マンションを避難施設として活用できるよう、自主的に所有者と覚書を交わしている自治会もある。当事者間で合意が得られている場合は、市が介入することはないという。
協定を結んだ民間ビルの平均収容可能人数は400人で、約1万3000人が退避できる。対象地区には約4万人が住んでおり、3割以上をカバーできる計算だ。「可能性が残るビルは160カ所ほど。いつ来るかわからない津波に備え、1棟でも多く、1日でも早く締結を進めたい」と、同課では引き続きビル所有者と協議を続けていく。
津波避難ビルの数を増やすだけでなく、有事の際の実効性を認識し、防災対策に反映させることも重要だ。同課によると、地震や津波被害を想定した防災マップが8月までに全戸配布できる見通しで、地域住民やビルの管理者と協力し、マップを基にした避難経路の確認や、ビルの退避場所を利用した訓練を行う予定という。
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