平塚版 掲載号:2017年3月9日号

たった一人の成人式 文化

寝たきりの女性、福祉施設で

専門学校時代の友人や家族、主治医らが出席した
専門学校時代の友人や家族、主治医らが出席した
 在宅福祉サービス施設、平塚栗原ホーム(立野町)で3月2日、市内在住の女性Aさん(20)のためにささやかな「新成人を祝う会」が開かれた。本来ならば1月9日の成人式に出席するはずだったが、18歳の夏、運命は大きく変わった。 

 Aさんは1996年12月、先天的な心臓の病を抱えて生まれた。生後5日目から4歳までに8度の手術を受け、血液中の酸素濃度が低下するチアノーゼに悩まされた。三歩歩くだけで苦しく、しゃがみこむという生活が長く続いた。

 両親はAさんの幼少期に離婚。母子家庭のさみしさはあったが、兄と妹で支え合った。母の友里さん(49)は「よく食べ、よく寝る子でいつもにこにこ笑顔。家庭を明るく照らしてくれた」と当時をなつかしむ。

 平塚市内の小中学校で学び、高校生になると2つの目標を持つようになった。「お母さんを温泉に連れて行ってあげたい。社会人になったら一生懸命働いて学費を返したい」。卒業課題だった「親への感謝の手紙」につづった。友里さんには愛娘の本音がうれしかった。

 「たくさん資格を取って事務の仕事に就きたい」と横浜市内の専門学校に進み、そこで6人の仲間と出会った。その一人岡崎優莉さん(20)は「授業もご飯も一緒。放課後もいつも一緒でした」と振り返る。7人が互いを親友と自覚するのに時間はかからなかった。

 それから3カ月後、Aさんは持病から来る突発性の不整脈に襲われた。

 その日は15年7月4日。自宅にいた友里さんがふと部屋中を見渡すと「絶対にそこでは寝ないという所に娘の足が見えたんです」。胸騒ぎが止まぬまま駆け寄った先に、青ざめた顔をしたAさんが倒れていた。

 搬送された市民病院で宣告されたのは低酸素脳症。自力で呼吸はできるが表情はなく、寝たきりの状態。数十分に1度の痰吸引が欠かせず、24時間の看護が必要な身体になっていた。

 「もっと早く気付いてあげられたら」。日増しにつのる自責の念から、施設に入れず仕事をしながら看護する道を友里さんは選んだ。

 平塚栗原ホームへの通所は昨年11月から。現在は週2回通い、ほかの日は友里さんや訪問看護のスタッフが自宅で世話にあたる。仕事と看護の両立には「力の限り」の覚悟で臨んでいる。

これからもずっと一緒

 同施設が初めて企画した成人式には、岡崎さんをはじめ親友6人が顔をそろえ、Aさんの主治医や施設職員らおよそ30人が出席した。桃色の晴れ着に身を包み、艶やかなメイクを施してもらったAさん。会場には、誕生から専門学校入学までの楽しそうな表情がスライド写真で流された。

 友人代表のあいさつで岡崎さんは「ずっと一緒にいたよね。これからも一緒にいようね」と涙をこらえた。 友里さんは「成人式は写真を撮ってお終いだと思っていました。素敵な成人式を開いてくださり娘も感謝しています」と頭を下げた。

 式の最後「可能性をあきらめません。娘の未来と笑顔を取り戻すまで」と語った友里さん。温かな成人式は、決意表明で幕を閉じた。

※ご家族の意向により、記事では匿名としました。

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