事件捜査で使われる被疑者の似顔絵の精度を競う第1回「自筆捜査用似顔絵競技会」がこのほど県警本部で開かれ、平塚警察署刑事第一課の鑑識係で巡査長の島根彩さん(26)が最優秀賞に選ばれた。
神奈川県では初開催となった競技会には県内54署からおよそ65人が出場した。目撃者役に対し人相の特徴を聞き出し、完成した似顔絵を県警本部の職員らが審査した。目撃者役は被疑者役の顔写真を見ながら出場者の聞き取りに応じた。
被疑者役の年齢や顔の特徴、体格などを質問し、白のわら半紙にHBの鉛筆を使い10分程度で似顔絵を完成させた。被疑者役の写真を見た時「あまり似ていないなと思った」というが、審査員からの評価は高く、年齢やキャリアが上の先輩署員に引けを取らず最高位を勝ち取った。警察官になる前に絵画を習った経験もなく「名前が呼ばれた時は夢だろうと思った」と島根さん。吉報にふれた母も喜んでくれたといい「今回の結果に恥じぬようもっともっと似顔絵の技術を身に付けていきたい」と謙虚に前を向く。
似せるより特徴を反映
捜査用の似顔絵はおもに鑑識係が描く。似顔絵作りは事件現場での指紋採取や足跡採取、DNA採取と並んで被疑者の検挙に関わる鑑識係の重要任務だ。
似顔絵は本人に似せることより人物の特徴を色濃く反映させることが優先され、捜査対象を絞り込み過ぎないようにすることも検挙に大きく関わるようだ。島根さんはこれまでにおよそ60枚の似顔絵を描き、そのうちの3枚が被疑者の検挙につながったという。
島根さんが似顔絵を描く際に心がけているのが「被害者の心に寄り添う」こと。被害者は女性が多く、性犯罪などで心身に傷を負ったばかりの人も少なくない。そこで島根さんは被害者の正面ではなく、真横にそっと腰かけ「無理はしなくて良いですからね」「軽いイメージを話してくれれば良いですから」と優しく語りかけるところから始める。
その後、被害者の心が落ち着くのを待って質問を開始。被害者に負担をかけないよう10分〜15分程度を心がけ、質問内容にも神経をとがらせる。「たとえば『有名人だと誰に似ていますか』といった質問は禁句。そう尋ねてしまうと被害者の方の記憶がその有名人に傾いてしまうので」。被害者の正面に座らないのは、被害者の記憶が島根さんの顔つきになびかないようにする意味もある。
県警署員はおよそ1万5千人で鑑識係は299人、うち女性は33人。平塚署の鑑識係は6人で女性は島根さんのみ、年齢も一番若い。
そんな男社会で働く島根さんの今後の目標は「一日も早く先輩に追いつくこと」。今後、他署へ異動することがあっても「鑑識係を続けていきたい」ときっぱり。「誰からも頼られる鑑識のプロになりたいです」と、みずから選んだ道を歩み続ける覚悟だ。
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