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日本国憲法の制定過程から学ぶ 幣原内閣の政権維持と鳩山一郎 〈寄稿〉文/小川光夫 No.56

公開:2011年1月21日

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56 自由党結成と辻嘉六、児玉誉士夫と三木武吉

 自由党の相談役に右翼の大物フィクサーとして知られる辻嘉六(つじかろく)という人がいた。彼は政治の裏街道で活躍した人物である。元台湾総督児玉秀雄の側近であった辻嘉六は同じく大物フィクサーである児玉誉士夫(こだまよしお:エアバス選定において、ロッキード社が田中角栄首相に賄賂を送ったときの秘密代理人である—ロッキード事件)宅を訪れ、自由党結成のための資金を提供するようにと、告げた。その児玉は戦時中に第一航空艦隊司令官長大西滝次郎中将(最初に25名の航空隊に対して神風特攻を命令した人物)の依頼を受けて海運調達部隊の嘱託となり、「児玉機関」をつくって物資調達を行っていた。

 上海に置かれていた児玉機関は軍の全面バックアップによって中国全土の基金属や軍需物資などを調達した。その児玉が中国大陸から飛行機で持ち帰ったとされているダイヤモンド・プラチナ・金などの貴金属は、ダイヤモンドが叺(カマス)にひとつ半、プラチナはみかん箱に二十個以上であったというから驚きである。その持ち帰った貴金属はアメリカ(進駐軍=占領軍)に知られることになり没収されるが、その一部は児玉の手元に残り自由党結成のための資金繰りに使用された。1945年9月、辻嘉六は児玉誉士夫を引き連れて、鳩山一郎のいる石橋正次郎邸(戦後米軍に接収され、現在はアメリカ公使公邸となっている)を訪れた。この時、児玉から提供されたダイヤモンドなどの貴金属は現在では数千億円以上(?)になると言われている。またこの貴金属を売り捌いたのが幹事長に就任した平塚の河野一郎であった。『河野一郎自伝』には、河野が資金工作をしていたことが記載されている。

 では、児玉が鳩山一郎に惚れ込み何故貴金属を提供したのか、それには政治家三木武吉の存在がある。香川県出身の三木は、鳩山が旧政友会であるのに対して旧民政党に属していた。しかし大政翼賛会が発足すると二人とも政府に背を向け、東条内閣の誕生にも抵抗するなど意気投合した。三木は鳩山とは異なり苦労人である。彼は雑草の如く逞しく活動して政界及び裏社会においての実力者に登りつめるが、国のリーダーとなると自分には向かない。やはり外務省高級官僚及び東大法学部教授を兼務し、市議会議員、弁護士であった父(和夫)を持ち、共立女子学園の創設者であった母(春子)のもとで英才教育を受けた鳩山一郎しかない、として鳩山をバックアップした。

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