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日本国憲法の制定過程から学ぶ 衆議院本会議、2日目以降の質疑 〈寄稿〉文/小川光夫 No.79

公開:2011年7月29日

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 昭和21年6月26日、進歩党の原夫次郎(ふじろう)議員より、4点ほどの質疑があった。一つはベアテ・シロタの原案である「両性の平等」について(これは日本の伝統的な家族制度の崩壊につながるとしている)、二つは自衛権までも放棄したのならば他国に国防を依存しなければならないことについて、三つは国民主権と天皇主権における曖昧さについて、四つは二院制の問題点などについての質疑があった。それに対して吉田は、個人の権威と両性の本質的平等に立脚して、封建的遺制を払拭する。直接的には自衛権を否定していないが、近年の戦争は自衛権の名の下におこなわれてきたので、全世界に平和愛好国であることを表明したい、と述べた。また金森徳次郎国務大臣は、国民主権について、我が国は君民一如の国で、天皇は国民の心の奥深くに張っている。また両議院についての議論は必要ではあるが、二院の間の論争を調和するために憲法には規定を設けている、などと述べている。

 6月27日、第三日目は、進歩党吉田安(よしだあん)、社会党森戸辰男、協同党酒井俊男の三人からの質疑があった。特に森戸辰男は、松本委員会が設置される以前から高野岩三郎や鈴木安藏などと共に憲法研究会を発足させ、フランス人権宣言や合衆国憲法などに基づく憲法改正草案を作っていたことから、鋭い質問を浴びせかけた。

 6月28日の衆議院本会議最終日においては、無所属の安部俊吾、社会党の細迫兼光(ほそさこかねみつ)、日本民主党準備会の布利秋(ぬのとしあき)、共産党の野坂参三議員から質疑があった。安部俊吾議員は、まず現在の第31条「法定の手続きの保障」、第32条「裁判を受ける権利」、第33条の「逮捕の要件」、第34条の「抑留・拘禁の要件、不法拘禁に対する保障」などについての質疑を通して人身保護律の必要性について、さらに困窮者に対する生活保障や財閥の事業独占阻止などの法文を憲法に挿入することの必要性などについて説いた。また彼は、参議院の構成及びその機能に何ら憲法には明示がないことや憲法が翻訳調であることなどについて指摘した。最後に質問に立った日本共産党の野坂参三衆議院議員の第9条「戦争放棄」についての質疑について紹介する。

 野坂議員は、「戦争には我々の考えでは二つの種類の戦争がある、二つの性質の戦争がある、一つは正しくない不正の戦争である。是は…正しくない。同時に侵略された国が自国を護る為の戦争は、我々は正しい戦争と言って差支えないと思う。此の意味に於いて過去の戦争に於いて中国或いは英米其の他の連合軍、是は防衛的な戦争である。是は正しい戦争と云って差支えないと思う、一体此の憲法草案に戦争一般抛棄と云う形でなしに、我々は是を侵略戦争の抛棄、斯うするのがもっと的確ではないか。」と主張した。この質問に対して、吉田首相は「国家正当防衛権に依る戦争は正当なりとせられるようであるが、私は斯くの如きことを認めることは有害であると思ふのであります。近年の戦争の多くは国家防衛権の名に於いて行われたことは顕著なる事実であります」と答弁している。今では考えられないが、共産党の代表が「自衛のための戦争」については肯定し、一方では政府自由党の総理大臣が「侵略戦争のみならず自衛戦争までも放棄している」と主張しているのである。
 

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