日本国憲法の制定過程から学ぶ ソ連提案による日本國憲法第66条2項 〈寄稿〉文/小川光夫 No.94
「文民条項」については、もともとFEC(極東委員会)の「新しい日本国憲法のための基本原則」に示されていたものであったが、日本の復讐を恐れたソ連が極東委員会第3委員会(憲法及び法制改革委員会)で強く要求していたものである。当初の日本国憲法の原案には侵略戦争のみならず自衛のための戦争をも禁止していたことから、極東委員会は日本に対して憲法に挿入するように勧告していなかった。しかし、第9条が芦田委員会で修正され、8月24日の衆議院本会議でもそれは可決されたことによって、中国譚(タン)代表やソ連ラミシヴィリ代表からは「軍隊の保持が可能になった」と指摘があった。
9月19日、第26回極東委員会において、ソ連代表ラミシヴィリは「すべての大臣は、シビリアンでなければならない」という提案を行い、この提案は翌日の第3委員会でも検討がなされることになった。同年9月21日、極東委員会第27回会議では、第3委員会の声明をめぐって激論が交わされた。特に譚博士による鋭い指摘もあって、次第に会議はシビリアン条項が必要であるという方向に傾いていった。
譚博士は、「日本国憲法第9条が、芦田委員会で修正されたことを重く見ている。修正された条文を見ると、第9条1項で列記された以外の目的であるのならば、軍隊を保有することができると、解釈される。芦田委員会の修正の目的は何なのかその意図を疑義に付したい」と述べた。それに対してアメリカ代表ボートンは、「各内閣の国会への責任はきわめて明確に示されており、内閣がシビリアンでなければならない理由は見あたらない。しかし、何故修正されたのかについては、マッカーサー元帥に問い合わせることにする」とし、イギリス代表サンソムも「第9条は芦田修正によって非常にあいまいになった」と指摘した。最後にオーストリア代表プリムソルは、「すべての国務大臣はシビリアンでなければならない、という条文を挿入するようにマッコイ極東委員会議長から最高司令官に伝える権限を与える」という動議を発した。それに対して、ソ連代表ラミシヴィリはいちいち権限を与えるのではなく極東委員会から直接最高司令官に説明を求めればよいのではないか、との強硬な意見も出たが、それについては否決された。
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