第57回小田原梅まつり菓子展示会に参加する飴細工師 中戸川 正幸さん 市内栄町在住 56歳
飴でつなげる人との輪
○…「エンターテイナー」。溢れる言葉と、くるくる変わる表情に、この言葉が思い浮かんだ。飴細工師という肩書きからは、無口で黙々と仕事をする職人を思い浮かべそうだが、普段は精密機器メーカー勤務の会社員。休日、砂糖を溶かす甘い香りとともに変身する。
○…飴との出会いは幼少時。板橋の祭りで見た飴細工に感動し、いつまでも記憶に残った。社会人になり仕事で中国を訪れる機会が。そのとき道端で見かけたのが、昔見た飴細工の実演販売だった。滞在の度に職人の前に座り込み、細工の過程を観察し続けた。通いつめるうちに心が通じ、技術を伝授される。今でも交流が続いているという。
○…今年で2回目となる菓子展への参加。去年の菓子展には苦い思い出がある。女の子から受けたセキセイインコの細工のリクエスト。作って渡したら「これは違う」とダメ出しを受けた。何が気に入らないのか分からない。後日、本物のインコを見る機会が。指に止まったインコの爪に目が止まり「これだ!」。爪の形態が違っていたのだ。女の子はそれに気づいたのだろう。「子どもはとても厳しい。でも発想はとても自由。私にとっては先生です」と相好を崩す。ホテルや住宅展示場、幼稚園などに招かれて実演を行うことも多い。「観る人、買ってくれる人、プレゼントされる人。みんなが喜んでくれてまるくなる。飴細工は人とひとをつなぐ力をもった『手段』です」と胸を張る。
○…これだけ熱烈に飴への想いを語られると、飴以外に興味はないのかと思いきやかなりの多趣味。洋裁、エンジン付モーターパラグライダーの製作・飛行、社交ダンスなど、体がいくつあっても足りないのではないかと心配になるくらいだ。「あと4年で退職。定年後はいつでも飴細工を観てもらえるよう、小田原駅前にアトリエを構えたい。あとは弟子の育成かな。でも新しい技法も探したいし…」。あくなき探究心はつづく。
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