先月、岩手県矢巾町で中学2年生がいじめを苦に自殺した。幾つものサインが見落とされていたのはなぜか。そしてサインを見逃さないためには。市内鴨宮在住の家庭教育カウンセラー・内田玲子さん(79)に話を聞いた。
内田さんは、1980年から家庭教育カウンセラーとして全国の幼稚園父母の会、小学校PTA、企業などで、89年からは全国の教育委員会、民生委員会などでも講演を行っている。これまでの講演回数は4500回にも上る。
岩手の事件は、子どもから幾つもサインが出され、学校側も対応しているようだったが、最悪の結果となった。なぜサインは見落とされたのか。
「情報は沢山あったが、肝心なサインに気づく事ができなかった。先生は子どものサインをどのように受け止めていいのか解らなかったのでは」と内田さんは分析する。
毎日違うサイン
いじめのサインを見極めることは難しいのか。
「いじめられている子でサインを出さない、という子はいない。たとえ忙しい親に気を遣い、心配を掛けまいと思う子でも、サインは出している。サインは十人十色。毎日違う。体の不調、食欲がない、など子どもの訴えにまず『どうしたの?』と声を掛けること。仮に子どもと接する時間が少なくても、必ずわかる。いかに見逃さず見つけるか。親や先生は素直にサインを受け入れてほしい」と話す。
学校で子どもたちは皆、母親に求めるのと同様に先生に愛を求めているという。
自身も先生の言葉に救われた経験を持つ内田さん。「学校では先生が頼りなので、サインを見抜いてほしい。問題を抱えている子が来たら、優先順位を上げ、即応するべき。数秒でもいい。どんな場合でも目を見て、『どうしたの』と聞いてやる。それだけでも子どもは満足する。『後でね』とか『忙しい』ではクラスがまとまらない」と先生の感性に期待を込めた。
家の中は練習場
いじめはなぜ起きてしまうのか。内田さんは、いじめる側もいじめを受ける側も「『生きる力』が足りないから」だという。
「『生きる力』とは、やって良いことと悪いことを日常生活の中で教えることで身につく。家の中で問題が起きたら、その都度教える。家の中は練習場。練習問題を繰り返すことで覚えていく。生きる力を教えているか否かは、小学生になると顕著になる」と話す。
間もなく夏休みが終わる。子どもからのサインを見落としていないだろうか。
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