▽サッカーの日本代表戦を欠かさず店内でテレビ放映する居酒屋「まいうー食堂」(栄町)で、今秋はラグビーを初めて流した。集客策としてW杯放映を事前告知すると、続々と来店。店主は「ラグビーにこんな力があるとは」とうれしい悲鳴をあげた。
▽日本で開催される2019年W杯の日本代表合宿地に小田原が選ばれた。城山陸上競技場は来年9月頃から半年かけて改修、ラグビーにも使える環境に整備。17年4月から代表の受け入れが可能となる。
▽市内に合宿地決定後、中学生以下のラグビースクールが始動、9月には小田原ラグビー協会も発足した。そこへきてのW杯日本代表の大躍進。ラグビーでの地域活性を目指す小田原市にとって、願ってもない追い風が吹いている。
▽ただ、W杯期間中に市内でラグビーに関する大々的なイベントはなかった。横浜ではパブリックビューイングが実施され、深夜にも関わらず街が大いに沸いた。元々、ラグビーの風土があるとは言えない小田原。城山の改修後は、選手との交流イベントなども予定されるが、競技場の完成待ちではせっかくの好機を逸してしまわないだろうか。
▽W杯後のブームで思い出されるのが女子サッカー。なでしこジャパンのW杯優勝で、国内リーグの年間入場者数も一時22万人を超えたが、その後減少し昨年は14万人に。「にわかファン」を「サポーター」にするには、競技に接する機会を増やすことが重要だ。
▽5億円を想定する城山競技場の改修工事。工事中は陸上大会などが開催できなくなるため、異論もあがった。改修で利用競技拡大というメリットもあるが、それもラグビーによる地域活性化が目に見える形で実現することが大前提だろう。
▽市内の小学校では、25校中24校がタグラグビーを授業に採用。小学生の地元クラブは今月の県大会を制したほどで、今後はラグビースクールと連携を図る。また大人のラグビーチームを立ち上げる動きもある。
▽市は、今年度中に企業や商店街などと活性化に向けた準備委員会発足を目指す。居酒屋店主がチャンネルを変えたように、変化が起きた今こそ、ラグビーの街へ官民あげてトライすべきではないだろうか。