デッキに小田原産の檜を使い昨年開所した「相馬さとばたけ報徳センター」。今年は同じく小田原産のモミに、力強く施設名を彫った長さ3mの看板が贈られた。
(有)小田原植木社長の近藤増男さん(69)は「道の駅そうま」にカツラの木を寄贈。社員の山口典昭さん(54)とともに植樹した。カツラは、春になるとハート型の葉をつける。近藤さんはカツラを選んだ理由について、「相馬と小田原が心(ハート)でつながり続けるように」と話した。高さ9mのカツラが、震災の年に贈ったモミ(=写真上、左の木)に寄り添うように植えられた。
また13日には小田原市東西郵便局長会の川瀬潤(ゆたか)さん(46)らが相馬市役所を訪れ、2013年に贈呈した木製ポストを磨いた。
思い出の品を再生 新たに生まれた交流
福島第一原発の15Km圏内、南相馬市小高区の双葉屋旅館には、テーブル3台が届けられた。卓の中心に松や鶴の彫刻の欄間が配置されたテーブルは、木工団地の(株)ラ・ルースが製作した。
来年4月の避難指示解除に向け、除染が進む小高区。旅館の女将の小林友子さん(62)は、建て替えのため解体する向かいの家から貰い受けた欄間を、なんとか残したいと思案。知人の伝手で報徳の森プロジェクトのメンバーと知り合い、相談を持ちかけた。小田原産の杉と檜を使い寄木の設えで完成したテーブルを前に、友子さんの夫・岳紀さん(67)は「歴史を引き継いだこのテーブルには物語が流れている」と、しみじみした様子で感謝を述べた。
また欄間の持ち主の新開喬さん(78)・洋子さん(73)夫妻も「こうして残してもらえたことが本当にうれしい」と笑顔で話した。
テーブルは旅館の食堂に設置され、早速日常の一部に溶け込み始めた。にぎやかに朝食をとる一行の様子に、友子さんは「これまでできなかった”普通のこと”ができるのは、しあわせ」とつぶやいた。
思いを込めて 市民が尽力
被災地に届けられた看板やテーブルには小田原産の木材が使われ、作り手の思いが存分に込められている。
さとばたけセンターの看板には、辻村山林のモミを使用。小田原で書道教室を開く堤千恵子さん(49)が毛筆で書いた文字を、大工で木工作家の千賀基央(もとなか)さん(30)が彫り上げた。とめやはねなど筆の質感を再現しようと丁寧に彫刻刀を動かした千賀さんは、震災直後に被災地を訪問。「その時はただ見ただけ。いつか何かしたいと思っていたので、今回の依頼はうれしかった」と笑みを浮かべた。
テーブルを製作した(株)ラ・ルースの木工職人・千葉祐弥さん(35)。小高の小林さんが描いたテーブルのデザインを基に、欄間を引き立たせる作りを工夫した。仕上げの作業中には「気持ちが込もったと思う。このテーブルを囲み、新たな思い出を作ってほしい」と話していた。
東日本大震災以降、小田原産木材を使い被災地を支援している報徳の森プロジェクト(高木大輔会長)のメンバーたちが、12月12・13日に福島県を訪れた。被災地と小田原を「報徳の精神」で結ぶ交流は5年目を迎えた。
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