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対談・小田原での暮らしを見つめる【1】 "共感"の時代 経済学者×宮大工棟梁

社会

公開:2016年7月30日

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 小田原城天守閣の耐震改修工事を経て、新たに注目が集まっている小田原市。ともに市内在住で経済学者の井手英策さん(44)と宮大工棟梁の芹澤毅さん(45)が、それぞれの生業を通し、小田原での暮らしを見つめる対談を行った。会場は芹澤さんが19年前に、父・伸明さん(79)と一緒に復元工事にあたった、小田原城銅門。

 芹澤 天守閣のリニューアルが終わり「地元の人に、こんなことができる」と存分に伝えられたのかなと思います。リニューアルは終わったけれど、これがスタート。時代が変わりつつあるところで、業種を問わず、何ができるのかみんなが模索している状態だと思います。自分自身のやっている軸は決して変わることがないけれど、物事の善悪の判断を知っておくことや、ちょっとした行動力でガラッと変わることってある。我々が自分の力だけでは知ることができないところを、井手さんの学者の知見でアドバイスいただき、糧にしたいと思います。

 井手 僕は”よそ者”という強みがある。小田原に引っ越して3年目ですが、まだ小田原のことをよく分かっていない。一つひとつの出会いや発見が新鮮で、良いところも悪いところもすっと入ってきます。

 その中で、お城があるってこんなにすごいんだと思いました。6月30日付の朝日新聞で、小田原城から熊本城への寄付の話を紹介したところ、全国から多くの感動の声が寄せられました。もし自分たちの城が熊本のように半壊したら、と想像した時に熊本の人たちの気持ちが痛いほどわかったのではないでしょうか。それが寄付という動きにつながり、みんなが感動した。

 結局、僕たちは「つながり」を求めているんだと思います。同じところを探して、気持ちを分かちあい、自分たちにできることを探した。小田原の人にとって象徴的な、なにか気持ちを一つにしていくことができる原動力の一つが「城」なんじゃないかと。

 芹澤 これだけの人の共感を得たのは、文化も含めてシンボリックな城の存在感というのがかなり大きな意味を持つと感じました。

 井手 ”気持ち”は目に見えないけれども、みんなの気持ちを束ねる「城」という存在は目に見える。だからもしも壊れちゃうと、みんなが傷つくんですね。

 芹澤 先日文化財に携わる人たちの研究会に参加しました。そこで今までぼやっとしていた自分の文化財保存の概念の、一つの例えとなる講演がありました。キーワードは「思い出」。誰もが持つ、家族や友達、小さい頃の思い出という過去が現在の自分を作り、その解釈で未来を予測して行動する。文化財は、思い出を視覚や空間として捉える唯一の物体である、と。銅門へ来ると思い出の空想が目で捉えられる。昔の人の様子を直感できる唯一の財産だと。

 私は文化財の保存を専門としています。なぜそれを大事にするかと考えたら、思い出が詰まっているから。そして少しでもオリジナルに近いまま保存して次の世代に渡していくことが一番重要だと考えています。

 例えば腐っている橋を修理する時に、取り替えてしまったらオリジナルは二度と見ることができない。ほんの少しでもオリジナルを残し、現代に修理したところと合わさっていれば、次に修理する人がまた考える。いま私たちがやっているのはまさにそれです。思い出を大切にしつつ、先人たちの技術を尊重し、そこに自分たちの考えを足していく。最善を尽くし、次の代に渡すことが大事だと思います。 =次号以降に続く
 

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