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小田原のまちが教室 未来を支える学校づくり 足元からのグローバル教育で、新たな青年期発達教育を創造 学校法人新名学園 旭丘高等学校
1902(明治35)年に新名百刀女史により創設、女子の実学教育のさきがけを築いた新名学園。その建学の精神は「知と技と観(物の見方・考え方・処し方)の統一」「生活と教育の結合」として引き継がれ、現代の生徒一人ひとりの発達と人間的成長を支えている。今年、創立115周年を迎えて、新しい私学の創造をめざし、地域に根ざし国際交流にも活動の幅を広げている新名学園旭丘高校の水野浩理事長・学校長に、旭丘の教育について語ってもらった。
現代の青年の「生きる力」を育む
―「地域を育てる学力と人間力」を培う教育の創造を学校づくりの使命にしていると、常々強調されています。改めて、新名学園の教育・子ども観・学力観についてお聞かせください。
「学力の中心は認識の能力ですが、その認識の能力は、身体能力や感応・表現能力、労働能力や社会的能力などと関連し、人間としての総体の力と結んで形成されていくものと考えます。私たちは、学力の基礎を「言語」「数量」の認識の力として捉えるとともに、人や地域、社会との「交わり」を通してこれを形成することを重視しています。
そうした視点をふまえて進めてきた、二つの学科(普通科と総合学科)・二つの校地(城内キャンパス、久野・荻窪キャンパス)を結び、「小田原のまちが教室」とする青年期の学びと自立の課題に応える教育課程づくりは、現在"Think Globally , Act Locally"の視点をもつ「足元からのグローバル教育」と結んで、さらに発展を遂げています。
昨年12月6日に、世界の72の国・地域の15歳を対象に経済協力開発機構(OECD)が実施した2015年度の「国際学習到達度調査(PISA)」の結果が発表されました。日本は「科学的応用力」「数学的応用力」の分野では順位をあげましたが、「読解力」については順位を下げました。また、科学についてのアンケートで「学んでいる時はたいてい楽しい」と答えた日本の生徒の割合(49・9%)は、OECD加盟国の平均62・8%を大きく下回りました。基礎学力は高いレベルにあっても、応用力や学ぶ意欲に課題があることが明らかになった調査結果でした。
こうした課題ともかかわって、文部科学省は次期学習指導要領改定でアクティブ・ラーニング(能動的な学習)を全教科で取り入れることを方針としていますが、本校も前述のような形で、一貫して子ども・生徒に「生きる力」の土台となる学力を培う学習主体づくりに取り組んできました」
地域づくりと結んだ国際交流
―創立110周年を機に展開してきた中国をはじめとする海外交流ですが、昨年は姉妹校と小田原の地域交流へと幅を広げ新たな進展をみせました。
「2012年の学園創立110周年記念事業の一環として位置づけた「国際連携教育」は、3年前に姉妹校提携を結んだ、世界文化遺産の兵馬俑がある西安市の西安外国語大学附属外国語学校に続いて、河南省安陽市第37中学(日本の高校)と姉妹校協約を結ぶところまで進みました。安陽市は漢字の起源となる「甲骨文字」が発見された地で、西安と同じく中国八大古都の一つです」
―交流の特徴的な点は?
「一つは、近代学校の使命である授業を通した交流を行っていることです。これまでの訪中では、日本のスポーツ・文化にかかわるクラブ顧問の教員と部員が現地で特設授業を行いました。相撲部や剣道部は「礼に始まり、礼に終わる」日本の武道の心を演武で伝え、陸上部は「一本の襷をつなぐ」駅伝の心を伝えてきました。演劇部は小田原と中国を結ぶ伝統文化である歌舞伎の「外郎売りの口上」を披露。書道部は文字発祥の地である安陽で書を通した交流を行いました。今後、教材研究、教授法の交流や授業に対しての生徒の感想もシェアしていきたいと思います。
授業交流のなかでもユニークなのは、中国最初の王朝を創出し”治水神”として崇められている夏王朝の禹王の碑を、西安の碑林と酒匂川上流の文命堤の碑文で読み解く日中高校生共同フィールドワーク授業(講師・郷土史家大脇良夫氏)です。昨年3月の訪中の際には、本校の副校長が西安碑林博物館に納められた碑文の読み解きを通して、人びとの労働と協働の意味と、国のリーダーとして高い道徳性と技術力・指導力を発揮した禹王の存在と人間性について学ぶ授業を行いました。碑林博物館には、禹王の業績について書かれた『尚書』・大禹謨の碑文もあり、その中に日本の元号「平成」の出典となった「地平天成」の言葉を発見した生徒たちは、驚きの声をあげました。
二つ目は、新名学園私学教育研究所を介した教育・学術・文化交流を進めていることです。三輪定宣私学教育研究所長(千葉大学名誉教授)が、14年11月に西安外国語大学で「日本の教育制度と大学・大学生―日中比較の観点から―」と題した講演を、15年10月には国際漢字会議の際に安陽師範学院で「日本における教育と漢字・漢字文化」と題した講演を行いました。
講演の中で三輪定宣先生は、09年と12年の国際学力テスト(PISA)で中国・上海がトップになったことを紹介し、「応試教育」(科挙制度)の伝統を転換させた20年来の「素質教育」の成果が反映しているのではないかと述べました。
「素質教育」は私たちの言葉に言い換えれば「発達教育」です。一昨年春に来日・来校した西安外国語学校の崔副校長は、本校の不登校生徒の発達保障(ベーシッククラス)の取り組みや生徒参加・保護者参加に触れて、感銘とともに深い関心を示しました。今後、「子どもの発達」研究を柱に、教育研究の交流を深め、両校での生徒による学習成果発表会や学術研究討論会・教育文化学術展覧会の開催を重ね、生徒間の活きた学び、知識の伝達や教育交流のための学術資料の交換などを進めていきます」
―西湘日中友好協会などと結んだ海外諸国との共同交流の、今後のさらなる展望は?
「今春の西安訪問では、フランスの高校生を交えた生徒間交流が予定されています。今後も、【1】日・中・韓・モンゴル・米・仏など漢字文化圏や太平洋文化圏、シルクロード・欧州圏を軸としたより広い文化圏へと交流と学びの視野を広げ、【2】国際連携教育の発展と結んで本校のカリキュラムに位置づけた中国・韓国・イタリア・モンゴルの言語と文化に関する選択講座の充実、【3】インターネットを利用した日常の授業交流、【4】交換留学生制度の創設、【5】姉妹校と連携した学習旅行としての海外研修旅行の実施などを図るとともに、【6】引き続き本校の国際連携教育の取り組みを通して地域・市民・行政レベルの国際交流の発展に寄与していきたいと考えています」
無償教育と学校づくり
―「私学教育研究所」の研究課題と、研究成果についてお聞かせください。
「憲法学者の故星野安三郎先生に初代所長にご就任頂き、子どもと学校、地域が直面している問題に照らして5課題を見出しました。
○「私学と無償教育・公費私学創造」○「子ども・生徒の発達研究」○「日本国憲法の平和的生存権の保障と核兵器のない世界に向けた平和教育創造の研究」○「地球環境と地域環境の問題についての研究」○「小田原のまちづくりに係る『学校と史跡の共生』『小田原のまちの教育・文化の創造』課題研究」です。特に研究が進んだのが、無償教育に関する課題です」
―「無償教育」の研究が、教育や学校づくりに持つ意味とは?
「三輪定宣私学教育研究所長は『無償教育はそれ自体が教育力を持っている』と話されています。人類史700万年のほとんどが150人程の少人数の集団・共同体で、貧富の差もなく、狩猟生活を営んできました。この過程で優しさや思いやり、助け合い、連帯感といった人間の本質である共同性が育まれたのです。ところが1万年ほど前、人類社会に階級が発生し、貨幣経済が発達すると無償教育は有償教育へと変質し、教育の平等性は失われ、金銭や経済効率に左右されるようになってしまいました。
しかし、人類史の発展の中で無償教育の理念は再びよみがえり、20世紀半ば過ぎに国際人権規約の中に人類普遍的原理として確立しました。日本でも、2012年秋に中等教育への無償教育の漸進的導入を定めた国際人権規約第13条の留保撤回がなされています。
21世紀以降の人類の羅針盤といってもよい、子どもを「社会の宝」とする無償教育の理念と運動は、私たちの教育づくり・学校づくりの指針となり、学園の将来の学校像として「公営私学(公費私学)」の創造を「新総合計画」の中に位置づけています」
スポーツ分野のカリキュラムが進化
―昨年は、スポーツの分野でこれまでの積み重ねが花開いた年となりました。
「創部6年目の相撲部は、5月に第100回記念全国相撲金沢大会に出場し、8月には鳥取インターハイに団体戦で初出場を果たしました。この快挙へと導いた主将の矢野雄一郎君が昨年11月に伊勢ケ濱部屋へ入門し大相撲界入りすることになったことも大きなニュースです。「桜富士」の四股名(しこな)をもらった彼は私に、『自分をここまで育て、高校卒業とプロにいかせてくれた人々に恩返ししたい。5年で幕下になり、関取りを目指したい』と目標を語りました。
また、創部から18年にして、野球部が夏の公式戦初勝利を飾りました。この勝利は、ずっと野球部の活動を応援し支えてきた全校生徒・保護者・教職員と全学・地域の皆さんの力によってもたらされたものです」
―2017年には総合学科に「大学進学・スポーツクラス」が新設されるとのことですが。
「このクラスでは、二つのタイプの、生徒の学びと進路実現を図ります。
一つは、旭丘高校の重点クラブに所属し、全国大会出場などの成績をあげることに挑戦その実績をもとに推薦で大学への進路を拓く「アスリート」タイプ。もう一つは、学業とスポーツの両面で充実した高校生活を通し、指定校推薦やAO入試等を活用して大学の健康・スポーツ分野の学部・学科に進学し、将来、健康・スポーツ分野とその関連分野への就職を願う生徒です。
現在も、総合学科の総合選択科目・自由選択科目群には、スポーツ・健康分野の多様な講座が開講されていますが、これを、子ども・生徒の学びと発達、進路の保障の視点から「科学的なトレーニング実践」「基礎理論(身体科学)」「専門的実技(実践)」「スポーツと進路に係る学習」等の内容に分けて整理し、充実させていきます。
さらに総合学科進路探求クラスにもスポーツ類型等のコースをつくり、高校3年間スポーツに親しみながら自らの心身の基礎をつくり、多様な進路の実現を図りたいという生徒たちの願いにも答えていきます。
生徒たちが、ただ運動能力を高めるのではなく、心と身体を一体にとらえ、健康・安全や運動についての理解と運動の合理的な実践を通し、他者や地域社会との積極的な関わりをつくりだしていく資質や能力を育むことを目的とします。
久野・荻窪キャンパスの総合棟を改修し、トレーニング器具を設置した実践を中心とする教場と、座学やストレッチができる理論を中心とした教場を一体とした施設を、新年度までに建設する計画を進めています」
120周年へ向け新たな歩みを
―2022年の創立120年に向けた、今後の構想をお聞かせください。
「学園創立110周年を機に策定した『新総合計画』を、「地域立・市民立の私学の創造を図る」としたビジョンのもと、さらに前進させていきます。
その一つは、子ども・生徒の青年期の学びと発達を保障する教育課程づくりとも結んで、この間大きく進んだ地域社会との連携や国際連携・足元からのグローバル教育をさらに発展させるための、城内キャンパスと久野・荻窪キャンパスの施設・設備の総合整備を進めていくことです。
現在、久野・荻窪キャンパスに4月から生徒食堂を開設する計画を進めています。さらに今後、留学生制度の創設にも対応する宿泊研修施設や専攻科のカリキュラムに対応する施設、国際連携の情報施設を内包したインテリジェントセンター(文化センター・スポーツセンター)をつくっていく構想を持っています。
一貫教育を展望して『新総合計画』に盛り込んだ、上に専攻科、下に「子ども園」を設置する構想については、専攻科設置を先行して具体化することとし、地域の課題である「観光教育」の課程をつくる方針を持っています。「観光」という分野で大きく括りながら、例えば「観光と言語・文化」「観光と情報ビジネス」「観光と環境・健康・スポーツ」といった類系を持ったカリキュラム体系をつくり、生徒たちの関心や進路の希望に合わせた学習や資格取得ができる道を開いていきたいと考え、研究を進めています。
現段階の高校課程の総合学科の選択科目のカリキュラムにも、このことと結んで「スポーツ」「語学」「情報・ビジネス」「保育と福祉」「芸術(音楽・書道・絵画)」の類型を設置していきます。
現在、国の政策として教育の多様化が押し進められています。その多様化は企業・産業社会などの要請に応えて、生徒を社会にそのまま適応させるための多様化です。しかし、私たちが目指している多様化は、個性が分化し、成長する青年期の発達課題に応える多様化。社会を正しく批判し、建設的に変えていく能力を身につけるためのものです。
これまで述べた進路探求の様々なカリキュラム創設は、生徒たちの発達要求に応える多様化であると考えています。
明治後期の時代において女子の実学教育のさきがけをなした創立者の建学の精神を現代に引き継ぎ、地域立・市民立の私学として地域社会の未来を支える青年を育てていく学校づくりを進める決意です」
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こどもタウンニュースけんせい4月18日 |
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