小田原市消防本部の金城万里奈さん(27)は、東日本大震災で被災した消防官との出会いによって、見失いかけていた夢を取り戻すことができた。救急救命士となった現在は、足柄消防署松田分署から救急車に乗って現場へ駆けつける。
2011年12月、ボランティアで宮城県南三陸町を訪れていた金城さんは、仮設の消防署の前にいた。救急救命士を目指していたこともあり、自然と建物に吸い寄せられた。そこで知り合ったのが、当時の消防署副署長・佐藤誠悦さんだ。「実はそのとき、もやもやしていたんです。救命士になりたくて大学で勉強していたのに、行き詰まっていた」という金城さん。迷いを察した佐藤さんは、やさしく迎え入れてくれた。
佐藤さんは震災で妻を亡くしていた。人命救助のプロとして妻を助けられなかった無念を吐露しつつ、「残されたものとして一生懸命人を助けるのが使命」だとも語ってくれた。佐藤さんによって金城さんは原点に立ち返り、「自分の道を照らしてくれた」と感謝する。
神戸で被災
兵庫県神戸市生まれの金城さんは、4歳のときに阪神淡路大震災で被災。部屋には物が散乱し、大好きな街の風景も一変した。そこで全国から訪れた警察や消防、救助隊を目にし、「自分も人を助ける仕事がしたい」と思うようになった。
国士舘大学では救命士養成課程を選択。勉強に励みつつ、学費や生活費を賄うためにアルバイトで働いた。しかし、進級するにつれて学業が忙しくなり、両立が困難に。そして、3年生の11年3月から大学を休学。直後に東日本大震災が起きた。「神戸で助けてくれた恩返しを」と、3月下旬からは、がれきの撤去や救護所のボランティアとして被災地へ何度も足を運んだ。
佐藤さんに背中を押してもらった金城さんは、復学して資格を取得し、3年前に小田原市消防本部へ。「いてくれて安心と思われる存在になりたい」と一歩ずつ前へ進んでいる。
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