小田原版 掲載号:2017年4月29日号

障害者の地域作業所を運営するNPO法人「おだわら虹の会」の理事長を務める

高橋 直美さん

上新田在住 73歳

原動力は親のエゴ

 ○…障害者の一人暮らしを促すべく1年半前に開所したグループホーム。運営は身辺の世話を買って出てくれる地域住民の力が大きい。「家族のように接してくれる良き理解者の存在が、彼らの自立を助けている」。今月南鴨宮に誕生した障害者の作業所「ありんこホームふじみ」の一部をカフェとして開放するのは、地域への感謝の思いからだ。

 ○…長男の康弘さんは重度心身障害者だった。原因は出産時のトラブル。病院への怒りが込み上げ、家を売ってでも裁判をするつもりだった。だが、相談した専門機関で受けた一言にハッとする。「現実を肯定し、熱意をこの子に注いで」。我が子の顔を見れば涙がにじみ、「命を無駄にしない」と前を向いた。当時の医学では7歳の壁は越えられないと告げられた現実。「同じ年代の男の子のように」と、会話も歩行もできず寝たきりの息子を新幹線に乗せ、流行していたチェッカーズの曲を聴かせた。小学校に頼み込み、障害児は義務ではなかった教育も受けさせた。「親のエゴ」という底知れぬ愛情。養護学校を卒業すると、同じ境遇の親たちと3年がかりで障害者の作業所を立ち上げた。康弘さんが他界したのは、その後間もなく。20歳まであと20日に迫っていた。

 ○…「どんな障害があっても人には皆役割がある」。康弘さんが小学生の頃、級友らは始めこそ面白半分にからかっていたが、いつしか競うように車椅子を押して校庭に連れ出してくれるようになった。まだよちよち歩きだった5歳年下の妹は、雷鳴が轟く日にぴったりと康弘さんに寄り添っていた。「心細いだろうと心配したのかしら」と微笑み、「息子には周囲を優しい気持ちにする力があった」。

 ○…地域作業所には障害者だけでなく、引きこもり状態の人も通う。「外に出て、働き、お金を稼ぐ。それが人をイキイキさせる」。そんな姿を地域の高齢者に見せ、元気を伝染させたい。それが今の願いだ。

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