6月2日午後3時前。南町の国道一号線で、「日本一周 北海道→沖縄」と記した手書きの看板を付けた自転車の男性に出会った。
彼は北海道帯広市の樋野雄太さん(28)=写真。4月28日に自宅をスタートし、フェリーで津軽海峡を横断。1日50〜100Kmを目標に太平洋沿いを走り続けている。「辛かったのは岩手県。アップダウンの繰り返しで」。この日は朝に藤沢を出発したが、国府津で眺めた相模湾の美しさが印象的だったという。
大学卒業後にカメラ店などで働いたものの、仕事に楽しさを見出すことができなかったという樋野さん。「人生で一生懸命やった記憶がない。子どもの頃の習い事もすべて自主的ではなかった。何かに頑張る経験をしておかなければ」と一念発起して退職。自転車での日本一周を思いついた。
貯金を切り崩しながらの旅。「初めはホテルや民宿に泊まったけれど、今はもっぱらネットカフェ。そのうち日雇いの仕事でもしないと」と言いながらも、表情には充実感が漂う。「ゴールしたら人生観が変わるかは分からない。でも、ひたすら楽しいんです」と言い残し、箱根越えを目指してペダルを踏み込んだ。