日本庭園協会神奈川県支部の支部長を務める 清水 哲也さん 曽比在住 46歳
目指すは助演男優賞
○…庭師の修業を始めた頃、世間はバブル景気の真っただ中。「庭造りの需要も高く、習った技術を実践の場で試す機会も多かった」。しかし、現在は住宅事情や経済状況から庭のない戸建ても多い。2年前、後進へ技を伝える講習会を企画する日本庭園協会の支部長に就任。会場探しも一苦労の時代、縁が重なって総世寺の協力を受け、敷地で若手庭師への講習を兼ねた5年がかりの日本庭園造りが昨秋に始まった。
○…曽比で造園会社を営む父の背を見て育った。「継げと言われたことはないけれど、知らずに洗脳されていたのかも」。同年代がロックバンドに青春を捧げるなか、高校生の頃に興味があったのは京都の町家で見られる坪庭。限られた敷地で表現する世界観に魅せられた。「文字の黒と半紙の白のバランスが大事」と子どもの頃に習っていた書道になぞらえ、「ありったけの木を植えるのではなく、余白の美を大切にする点におもしろみを感じた。歳の割に地味だったのでしょうね」。造園を学べる大学への進学に迷いはなかった。
○…たとえば桑田佳祐は湘南、松任谷由実は都会、中島みゆきは人間の根底。「曲だけでその人の世界が連想できる。自分を表現できる術がある歌手ってすごい」。ペットボトルを眺めては、「この形に行き着くまでに、試行錯誤を重ねたのだろうな」。休日は樹海へドライブし、「良いバランス」と木々と溶岩が生み出す景色を眺める――。見聞きするすべてをモノづくりの観点で捉えてしまうのは、もはや職業病。心休まる暇もないが、「職人ってそんなもの」とあっさり。
○…「一流俳優が出演しても、必ずしも名作は生まれない。大事なのは主役と脇役のバランス」。それは庭造りも同じ。建物があってこそ、庭の存在価値があると考える。「助演男優賞をもらえるくらいでちょうど良いかな」。燃えるような情熱を抱きながら、その姿勢は意外なほど控えめだ。
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