小田原医師会の新会長に就任した 渡邊 清治さん 渡邊内科クリニック理事長 59歳
原動力は親への感謝
○…団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる2025年まで10年弱。国は病床削減の意向を示しているが、「病院から自宅に帰せば孤立してしまう人も多い。高齢化率が高い小田原ならなおさらのこと」と、内からにじみ出る穏やかな表情がにわかに曇る。「今後は在宅医療のニーズが増し、看護師や介護士の人員配置も大変になる。協力体制の構築に向け、医師会が旗振りをしていかないと」。会長に就任して1カ月。待ったなしの高齢問題に、さっそく動き出している。
○…「自分の思う将来を歩めば良い」。長男として実家の洋服屋を継ぐことに疑いもなかった高校時代、両親から受けた言葉をきっかけに医者を志した。だが、その思いは漠然としたもの。「勉強も自信がなかった」という18歳に道は険しく、「勝負事は苦手」というのんびりした性格も手伝って受験は全滅した。それでも失敗の悔しさこそが奮起の糧となり、「今の実力では2年間が必要」と両親に浪人生活を懇願。2浪の末に医学部に合格した。「どん底から這い上がる負けん気は強かったかな」。挫折を味わったからこその人間味が、横顔にあふれている。
○…病状や処置に加え、患者の性格や生活環境などもカルテに記入するのは、「人間全体を良い方向に導くのが僕の役割。体調を崩すにはさまざまな要因がある」と考えるから。「患者さんをいかに満足させられるか。医者は究極の接客業です」。そんな発想も、商人の息子だからこそ。顧客そして家族のために懸命に働いてくれた亡き両親を語る時、つい涙がこみあげる。
○…一男一女の父。毎朝家族にコーヒーを淹れるのが日課だが、「高校生の娘とはあまり会話もなくて」と苦笑い。スケジュール帳は講演や研修の予定で埋め尽くされ、家で夕食をとるのは週1日ほど。それでも、「人の生活の一部を担当している医者は一生勉強」と涼しい顔で、「死ぬまで引退はないかな」と微笑んだ。
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