南東北で開催された全国高校総体(インターハイ)。高校日本一をかけた戦いに、小田原からも多くの選手たちが挑んだ。福島県会津若松市で7月22〜29日に行われたソフトテニス競技では、相洋高が女子団体戦で過去最高成績となる5位入賞を果たした。
「記録を塗り替えたい」。大会前、相洋高女子ソフトテニス部の主将・矢野礼実さん(3年)が見据えた目標が、現実のものとなった。
29日の女子団体戦には、各都道府県を勝ち抜いた47校と開催地枠1校を加えた48チームが出場。2年ぶり7回目出場の相洋は、力のある3年生を中心に、過去最高成績のベスト16超えを狙って福島に乗り込んだ。
それぞれ3ペアが対戦し、2勝したチームが勝ち進む団体戦。1回戦の秋田北戦は、県大会のダブルスを制した神崎ひより(3年)・平本茜里(2年)ペアと、エースの高宮莉那(3年)・矢野ペアが勝利し、2回戦へ駒を進める。指宿商(鹿児島)との試合では、1勝1敗で3試合目までもつれるも、1年生の川嶋菜結・伊東未来ペアが踏ん張り、過去最高に並ぶ16強入り。高岡西(富山)との3回戦は、神崎・平本ペア、高宮・矢野ペアがともに勝ち、相洋史上初となるベスト8を決めた。同時に、待ちに待った女王への挑戦権も手に入れた。
女王追い込む
準々決勝の相手は、昨年のインターハイ覇者で、今年も優勝候補筆頭に挙げられた文大杉並(東京)。応援席には、家族やベンチ入りできなかった部員に加え、前日までのダブルスに出場していた小田原高や日大藤沢、川崎橘の選手たちの姿もあった。その中の一人、高宮さんの母・美保さんがコートで準備する娘にこう伝えた。「文大とやるだけでなく、文大に勝って終わりにしよう」と。
大一番は2コートに分かれてスタート。高宮・矢野ペアは、プレー範囲が広い前衛の矢野さんが立ちふさがり、相手の甘くなった球をスマッシュ。高宮さんも高速のストレートを決めるなどして4-2で先勝した。一方の神崎・平本ペアは、前日のダブルスで2連覇を達成した相手エースに対し、2ゲームを連取。神崎さんが後ろで粘ってつなぎ、平本さんが前で仕留める。しかし、世代ナンバー1ペアがじわりじわりと追い上げ、3-3でファイナルゲームへ。「リードできたのに試合を締めきれなかった」と平本さんは悔やみ、最後は相手の猛攻に伏した。
勝敗の行方は、3試合目の1年生に委ねられる。「思い切ってやってこい」と先輩たちから送り出され、気持ちが軽くなったという川嶋・伊東ペアは、第1ゲームを先取。その後、強豪の攻撃に必死に食らいついたものの、1-4で敗れ万事休す。「3年生を引退させないようにと思って臨んだ。悔しい」(川嶋さん)。それでも、先輩たちに用意してもらった舞台を記憶に刻み、「今年の結果を超えていきたい」と視線をあげた。
「いい仲間だった」
そのまま勝ち進んだ文大杉並は、優勝。文大を最も苦しめたのは相洋だった。
中学時代、高宮さんが「相洋に行こう」と声を掛け県内各地から集まったのが現3年生。ペアを組んだ矢野さん、主軸を担った神崎さん。出番こそまわってこなかったが、ベンチで出場選手を支えた吉澤琉菜さん、観客席から声援を送り続けた佐藤彩夏さんもそうだ。その輪に地元・千代中出身の飯田彩華さんが加わった。
ベンチから試合を見つめた飯田さんは、「負けちゃったけど、3年生の思いきりプレーする姿が見られてよかった。自分も悔いはない」と話し、強豪に挑んだ神崎さんも「最後にみんなで全国に来れてよかった」と声を絞り出した。
大舞台を終え、矢野主将は「新しい歴史をつくることができた」と目標達成に充実感が滲む。高宮さんからは笑顔がこぼれた。「みんなで一緒に成長できた。いい仲間だった」
ダブルスも奮闘
318組が参加して28・29日に行われたダブルスでは、3年連続出場の高宮・矢野ペアが32強、神崎・平本ペアが64強に入った。
小田原高の桒野(くわの)未来・山田歩実ペア(ともに3年)は、全国ベスト8を目標にするも初戦で敗退。桒野さんは「負ける時はいつも迷って振れなかったけど、今回は振り切れた。やりきれた部分はある」、山田さんは「実力を全部出せてないけど、2人で考えて強気に粘って1ポイントずつを楽しめた。ここで試合ができてよかった」と話した。