ついにこの日がきた―。 山北町の地方創生プロジェクト「D52奇跡の復活事業」で18日午後、およそ半世紀にわたり山北鉄道公園で静態保存されてきたD52の試運転が行われた=写真。
午後1時半、その瞬間をひと目見ようと約100人のギャリーが集まった。
復活の整備を託された元国鉄機関士の恒松孝仁さん(60)が運転席につき、湯川町長が出発の合図を送ると、汽笛とともに機関車がゆっくりと前進すると歓声が沸き起こった。
機関車の横にいた88歳の女性がハンカチで目頭をおさえていた―。
山北町清水で生まれ育った女性は当時、機関士と交際していた。谷峨のトンネルを抜けた所で鳴る汽笛に胸を躍らせていたという。「鳴らし方でそうだと分かるよう二人で決め事をしていました」という。最愛の夫は13年前に他界したが「近くにいるような気がした」と涙を浮かべた。
1960(昭和35年)から3年間、蒸気機関車の車両検修に携わりD52の解体作業にもあったことがある中戸川進さん(74)は「50年以上前の記憶が蘇り全身が震えた」と涙を浮かべた。「まさかこんな日が来るとは思わなかった。人生最良の日」と興奮を隠さない。
昨年夏から復活事業を担当し、この春に新任課長として他課へ異動する町企画財政課の佐藤孝行主幹(52)は「拍手や歓声を目の当たりにし、これを機に何かが変わる予感がした」と感慨深げに機関車を見守った。
昨年末から住み込みで作業を続けている恒松元機関士は「無事に動いて安心した。今日動かして残りの課題が見つかったので微調整して作業を終えたい」と話していた。
町は安全柵など周辺整備をした上で10月14日の「鉄道の日」にお披露目式を開催する方針。4月以降は鉄道関連の資料や映像、グッズ、イベント、記録(聴き取り)などソフト事業の実施に向けた検討を本格化させる方針。本紙撮影の当日動画をユーチューブhttp://youtu.be/f5Ld5Z7sg4Mで公開している。
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