南足柄市は6日、2018(平成30)年度の全線開通をめざし14年度に事業を再開した都市計画道路千津島・苅野線(以下・千苅線)について、完成時期が2022(平成34)年度になる見通しを明らかにした。約13億円を見込んでいた全体事業費が実際は約48億円だったことも新たにわかった。
千苅線は県道74号線(小田原山北線)と県道78号線(御殿場大井線)を接続する全長2710mの市道。
08(平成20)年までに全体の8割が開通したがアサヒビール神奈川工場西の神宮山橋上部工から県道78号線までの510mを残して工事が中断している。
13年3月定例会で加藤修平市長は「関係資料等の収集、問題点の洗い出しを行い15年度からの事業着手に向けて準備する」と表明。14年度には12年ぶりに事業を再開し約5000万円かけて未整備部分の調査、測量、設計に着手した。
見直しの経緯
15年度は国土交通省の社会資本整備総合交付金1億4千万円を含む2億5630万円を当初予算に計上して橋上部工の工事再開を決めたが、ほどなく国からの交付金決定が4900万円にとどまることになり予定の工事を見送った。
昨年秋には事業費や工法、工期などを見直す調査を業者に委託。14年度に約13億円と見込んだ全体の事業費が実際には約48億円となることが判明し、トンネルから切土に工法を変更することで全体事業費は約27億円になるという。
近藤充志都市部長は「15年度に予定していた工事を見送り全面的に見直した結果、トンネル工法に地盤が適さないことや多額の費用を要することが判明した。事業再開時(2014年度)の積算では20年以上前のデータを用いていた」と説明。さらに「南足柄市にとって必要な都市計画道路であり長年の整備を無駄にはできない。これから着実に進めるために事業全体を見直した」とも述べた。
新たに用地取得も
トンネルから切土に工法を変更することで、構造物が少なくなり工事費や維持管理費が削減できる一方、既設橋台のかさ上げや横断する農道や水路などの機能補償にかかる費用は高価になる。さらに勾配が急になり県道との交差点では安全対策が必要になる。切土による地下水や動植物への環境も懸念されることから市は「環境影響評価調査を行う必要がある」としている。
当初予定していた約4600平方メートルの用地取得も、約9800平方メートルに増える見通しとなり、今年度に改めて測量を行い17年度以降に用地買収に着手する。該当する地権者は約30件に及ぶこともわかった。
財政悪化が懸念材料
今年度は、前年度からの繰越金6700万円と、国からの交付金5300万円、起債6700円を財源に1億8700万円の事業費を確保。神宮山橋の上部工工事や皆沢橋の設計、用地測量などに着手する。
市都市整備課では17年度以降の残事業費を「約24億6500万円」と積算しているが、財政当局は「楽観視できない状況。一般的な事業と同様に今後の調整課題となる」と慎重だ。
南足柄市は18年秋の開業をめざし、竹松地区に約3億円かけて「道の駅」を整備する。19年度には県が「南足柄市と箱根町を連絡する道路」(南箱道路)を開通させる予定で、千苅線は同時期の開通をめざしていたが、完成時期が4年延期されたことで事業見直しを求める声も議会にはある。
道路整備の財源は一般的に世代間で公平に負担するため起債で財源を確保することが多い。しかし南足柄市の場合、起債により公債費(返済)負担が増えると、慢性的な財源不足の状態がさらに悪化しかねない。市は今年8月をめどに2017年度から3年間の財政推計をまとめ、必要な行政改革案を市民に提示することにしているため、このなかで千苅線についても検討する可能性がある。
6月定例会で市長は「少しずつでも着実に進める」と答弁していたが予断を許さない状況にありそうだ。
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