保健衛生分野で県民功労者表彰を受けた 渋谷 広之さん 松田町松田惣領在住 71歳
患者さんの笑顔が生きがい
○…足柄歯科医師会の会長として10年、地域の歯科医療充実を牽引してきた功績が認められての受賞。「患者さんの笑顔が見たくてしただけのこと」と、目を細める。部屋の中には新旧の専門書がズラリ。パリッと糊のきいた白衣を身にまとい、穏やかな表情で話す姿は「頼れるまちの歯医者さん」のイメージそのものだ。
○…生まれも育ちも松田町。祖父の代から続く歯科医一家で、小学校の卒業式では校長先生から「立派な歯医者さんになって」と激励されるほど。「だから、歯科医になるのは当たり前だと思っていた」と笑う。勉学に励みながら中学時代は陸上800メートルで県2位、高校では映画館に月に2、3回通って洋画を楽しむなど、充実した青春時代を過ごした。歯科大卒業後は、横浜船員保険病院に勤務。当時の乗組員との連絡手段は電報。「夜中に電報が来ることもあった。今は連絡手段が充実して、便利になった」と懐かしむ。
○…76年に地元に戻り、父から渋谷歯科医院の経営を任された。91年からは歯科医師会の会長に就任。患者さんの歯から撤去した金属の詰め物などを換金し、足柄上地区の1市5町に寄付する活動を始めた。「人の輪を大切にしたいと思って取り組んだ」と話すこの事業は、今でも続いている。
○…9年前に脳出血で倒れ、1カ月間、意識不明に。退院時は車いすだったが、リハビリを重ねて歩けるまでに回復した。今は週に2回、東海大学の歯科医師を呼び、現役を続けている。「診断と義歯の調整が私の担当。患者さんのためにできることは、何でもやりたい」。子どもだった患者さんが親になり、今度は親子で治療に来てくれることも嬉しいという。子ども3人は独立し、小学校の同級生だった奥さんと2人暮らし。休日は趣味の旅を楽しむ。京都がお気に入りで、20歳のときから250回以上訪れる。今年3回目の”夫婦旅”は予約済みで、今から心待ちにしているのだとか。