「NPO法人情緒豊かな町づくり」の理事長を務める 荻野 治久さん 山北町向原在住 74歳
「鉄道の町」の魅力伝える
○…日本一大きな蒸気機関車の汽笛の音が、遠く丹沢の山々まで鳴り響いた。永きにわたり眠っていたD52形蒸気機関車が昨年10月に復活。「車輪がたった2回転半しただけでも感動的だった」と子どものような笑顔で話す。今年度中に開館予定の山北駅前、鉄道資料館の運営をすることになった「NPO法人情緒豊かな町づくり」を2代目理事長として取りまとめる。
○…山北生まれの山北育ち。体を動かす事が好きで、酒匂川で泳ぎ、山でターザンごっこをし、すくすくと育った。祖父も父も、代々の鉄道マンの家。高校を出ると「敷かれたレールに乗っかった」と、当時の国鉄に入社した。駅手から車掌、列車指令、広報なども経験し、64歳まで勤め上げた。鉄道マンを支えた妻は、子どもが手を離れると再び勤めに出る「働き者で理解のある妻」で、2年ほど前に見送った。正月には孫6人が集まり「それはそれは賑やかだったねえ」と目じりを下げた。
○…同法人は12年ほど前に、山北地区の自治会が中心となり「地域イベントに協力しよう」と立ち上げられた。入会したのは退職してすぐのこと。先代理事長は職場の先輩で「目をつけられてね」と苦笑い。先代が勇退し、推されて理事長に。「会員それぞれが得意分野を持ち寄り、協力して作り上げている」と仲間を誇らしげに話す。
○…山北駅の無人化に合わせ切符販売を請け負うことに。ICカードが使えないために苦情を受ける事もあるというが、逆に良い事も。コミュニケーションが生まれ、地元の強み、元鉄道マンの強みを生かした観光案内などで、笑顔とともに観光客を迎え入れる。約半分が鉄道マンOBで、60から80代からなる集まりだけに、蓄積された情報量は莫大。資料をどう魅せていこうかと夢は広がる。「『また行ってみようか』と思える鉄道の町の魅力を発信していきたい」。新たな夢に向けていざ、出発進行。