都道府県対抗ジュニアバスケットボール大会で優勝した神奈川県代表のヘッドコーチを務めた 松澤 俊介さん 山北町山北出身 42歳
興奮をもっと、ずっと
○…体育館で見られるこの笑顔もしばしおやすみ。今年3月に県代表を率いて全国の頂点に立ったヘッドコーチはこの4月、学校の現場から小田原市教育委員会へ異動になった。14年間関わってきたチームスタッフの「まっちゃんが最後だから、ここはひと花」という意気をひしひしと感じた。「周りが立ててくれて、組織でつかんだ優勝」と表情は達成感に満ちる。
○…山北町の実家、スーパーマーケット・まつざわを「継げばいいかな」と思っていたが大学時代に変わった。中学で始めたバスケで仲間に恵まれ、気付けばその興奮や感動の虜になった。思わず拳を握る「うぉぉぉ!」という高ぶり、ハイタッチ、心の底からの喜び。「この心地よさをおっさんになっても味わっていたい」。そう思い教師になった。20年間で湯河原、鴨宮、白山中学校に赴任した数学科のバスケ部顧問は、興奮と感動の遺伝子を生徒たちに向けて発露してきた。
○…土日のために平日の「貯蓄」を意識している。愛妻と2人の愛娘の前では風呂掃除に洗濯、朝食準備と家事を率先。「平日に貯めても、部活で土日を空けてしまうから赤字」と後ろめたさの中にも充実した家庭人としての顔がチラリ。娘が生まれたころ、担任を持った学級で非の打ち所のない生徒と出会い「どう育てれば君みたいになる?」と問うたこともあるとか。
○…「心残り」は白山中の選手のこと。湯河原でも鴨宮でも優勝に導き「優勝させてあげたかった」と唇を噛む。かけた最後の言葉は「県西優勝」。恩師を見つめうなずく松澤チルドレンがそこにいた。ただ、見ているのは眼前の栄誉だけでない。「自分を支えてくれたバスケの裾野が広がってほしい。高校で続け、指導者になって、親になって子に教えてほしい」と撒いた種の開花を心待ちにしている。新たなコートに立った今春。「今を一生懸命やるしかない」と話す凛々しい表情に覚悟がみなぎる。