ジャカランダの世話を17年続ける 石田 貢さん 南足柄市竹松在住 81歳
異国の花咲かす好々爺
○…17年前、務めていた大山豆腐の社長が海外で見惚れて取り寄せたジャカランダの苗を数人で植えた。出社前や休み時間、勤務後に手をかけていた。しかし今年3月に出社すると「今日で会社、終わりだよ」との一言に仰天した。これを機に仕事を引退したが「自分たちが植えたことだし放置しておくわけにはいかない。木がある限りやらなきゃ」と、今も毎日のように自宅から片道30分を歩いて通い、世話を続けている。
○…5人兄弟の次男として山北で生まれ育った。子どもの頃から近くを流れる酒匂川で素潜りやアユ釣りをして遊んだ。9歳の時に父が戦死し小さな弟や妹がいたため、中学を出てすぐに木工所に就職した。19歳で富士フイルムに転職して定年まで勤め、定年からしばらくしてから今年3月まで大山豆腐山北工場で働いた。定年後とは言え、休みにも電話が度々鳴るほど仕事は忙しかった。「考えてみたら65年、働き詰めだな」と豪快に大笑いした。
○…若い頃は狩猟免許を持っておりイノシシやクマを撃ち、今は酒匂川漁協組合の役員も務める。20代から山登りに勤しみ、穂高岳や槍ヶ岳を縦走するなど名だたる山は制覇しているアウトドア派で、山仲間の妹が奥さんになった。今では4人の孫も大きくなり、ここ数年は夫婦で毎年富士山登頂もしている健脚ぶり。盆栽も趣味としており、自宅にはジャカランダの種から育てた苗木がずらり。「家内の理解あってこそだね」
○…ジャカランダが小さな時は、寒い冬には何重にも防寒対策をし、雪が積もれば合羽を着て落とし、愛情を注いで7年目にしてやっと花を咲かせた。植えた時から事細かに記された手書きの観察データと写真は膨大な量になる。「見てくれる人のために咲いているのかね」木に話したのか記者に話したのかはわからない。成長が早いジャカランダに「あと10年もしたらどんなになるんだろう」と目を細めた。