金太郎ファミリーの会の会長を務める 内田 清さん 南足柄市弘西寺在住 88歳
来し方に思い馳せ
○…8月19日に行われた『金太郎野外音楽祭』。オーケストラや和太鼓、合唱が夕日の滝に響き渡り、芝居やダンスを約500人の来場者が楽しんだ。今年は遊歩道が整備されたことで滝壺までバリアフリー化された。「子どもから高齢者までが楽しめてよかった」と安堵の声。主催するのは金太郎を通じて地域活性化を目指す『金太郎ファミリーの会』。94歳の現役会員もいて「まだ会長は降りられない」と笑う。
○…ある時に立ち寄った展覧会で、想像だにしなかった金太郎の姿を見て「こんなにも違うのか」と驚愕した。それ以来、「金太郎」と名のつくものを収集し始めた。自宅の棚には置物やマンガなどがずらりと並ぶ。旗揚げしたファミリーの会では、金太郎凧上げ会やゆかりの地への旅行なども企画し、金太郎遊び石広場には顔出し看板を設置するなどボランティア活動にも熱を入れてきた。
○…弘西寺に200年近く続く家系。9人兄弟で「当時の長男は、それは大事にされた」。近所の山や川を駆け回る一方、教師だった弘済寺の住職から書物を借りて読み漁った。戦況悪化の中で富士フイルムに勤め始めたが、松田山の防空壕掘りに動員された。遊びに行った根府川では戦闘機の機銃掃射をうけ、岩陰に身を潜めたこともあった。終戦後、「もっと勉強がしたい」と、5年遅れで高校に通い始め、埼玉大学に入学して教師になった。
○…寮に入り大学で学びながら歴史の研究に没頭した。大学で教員免許を取得し、小田原で小学校教員になると郷土史に傾倒した。休みのたびに地域に足を運び、図書館に通い子どもの頃のように書物を読み漁り、小田原の荻窪用水では「這いつくばって調査した」こともある。郷土資料館長や文化財保護員、古文書解析員も歴任。「古きを知り、新しいものを作っていくことが大事。調べたい事が山ほどある」と、探究心はまだまだ衰えを知らない。