▽山北町で開催された「還暦式」に地域活性化のヒントがある。この還暦式は当該年度に晴れて60歳の還暦を迎える人たちが任意で実行委員会を組織してお祝い式を開催する。卒業アルバムの名簿や交友関係から本人の所在地を割り出して案内状を送り、会場手配から運営まですべて手作りで開催する。補助金に頼る発想はなく、むしろ故郷のPRや消費にも気を配る。地域経済を意識した60歳ならではの取り組みで協力者の顔ぶれも多彩だ。
▽還暦式が山北町で初めて開催されたのは2年前。成人式の思い出が残る山北町体育館が会場だった。発起人は役場を早期退職した元職員で現役時代は駅周辺の街づくりに奔走した。笛吹き役が高じて、自ら駅前の空き店舗を借りて飲食店を開業した。山北駅前の「ポッポ駅前屋」の主人である。式典で来賓を前に「振り返るとこれほど素晴らしい環境がどんなに価値のある財産かを再確認した。同窓生を貴重な財産とし町の発展に努力する」と、宣誓文を読み上げた。
▽山北町のみならず足柄上地区のほとんどの自治体は人口減少の課題に直面している。同じく人口が減少している松田町では、定住人口の増加と地域経済の活性化を図るため「ふるさと松田同窓会開催支援助成金」を創設。地元小中学校の卒業生が開く同窓会に便乗している。出席者1人につき地元の店で使える商品券2千円分を助成し、町が用意するパンフレットの配布や町がすすめる施策について同窓会の席で参加者に情報提供することを奨励。移住定住やUターンの促進対策のひとつとしている。
▽私たちが暮らす地域の経済では前出の還暦式や同窓会など、いわば地産地消の取り組みの積み重ねが生命線となる。還暦式の実行委員長は「1月からの打ち合わせ会場はすべて山北の店。料理や飲み物、備品の調達もすべて山北ファーストで進めた」と話していた。イベントなどの催事を次々と地域で生み出し、それにかかる経費をできるだけ地元で消費する。こうした循環を民間レベルでさらに浸透させていけば、多額に及ぶ自治体のお金の使い方もさらに地元を意識したものになるはずだ。還暦式には学ぶ点が多い。
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