南足柄市の郷土史研究家らでつくる足柄史談会(武井延禎会長・会員数222人)の会誌『史談足柄』の第55集がこのほど発行され、南足柄市の近代史で戦時下の謎に包まれている「旧海軍技術研究所」(内山試験場)に関する新たな史実が収録された。
足柄史談会が発行する『史談足柄』は1962年から年1回の発行が続く機関誌で、会員の寄稿を中心に郷土史を収録してきた。
南足柄市の市史編さんにも協力し、文化祭などを通じて研究成果を発表するなど地域の歴史や文化の価値を内外に発信している。
史談会では、2015年の戦後70年を機に南足柄に住む戦争体験者への聞き取り調査を開始。75歳から100歳までの男女103人から会員が聞き取った体験談や遺品などを冊子『太平洋戦争下における南足柄の状況調査-戦後70年を迎えて-』に収録して発行した。16年6月には開成町、11月には市の文化祭で調査結果を展示し、戦時下の地域の様子を紹介した。
専門家 「歴史的価値」を指摘
『史談足柄』第55集には、調査で明らかになった「旧海軍技術研究所」の敷地見取り図や戦後に撮影された施設の写真、実験に使用した薬瓶への評価を記した寄稿が掲載された。
旧海軍技術研究所は1944年12月に当時の海軍が内山地区に設置したロケットエンジンの燃焼実験施設で、B29の迎撃用戦闘機「秋水」に搭載するため極秘裏に研究が進められた。
酒匂川沿いの江戸川工業所山北工場(現・三菱ガス化学)が実験用燃料の過酸化水素を製造していたためこの場所が選ばれたというが、文書や記録はなく、当時の軍関係者の証言をもとにまとめられた書籍がわずかにある程度という。
この研究所(内山試験場)について『史談足柄』に原稿を寄せたのは東海大学学園史資料センターの椿田卓士氏(54)。1986年から2000年まで南足柄市の市史調査委員を務めた椿田氏は98年刊行の『南足柄市史7通史編II近代・現代』で海軍技術研究所について執筆している。今回16年ぶりに目にした新たな資料に「感嘆の気持ちを込めて原稿を書いた」
椿田氏は「市史調査で明らかにならなかった歴史をさらに明らかにすることは地域にとって意義深い」と述べ、旧海軍技術研究所とともに戦時下に外国人抑留所があった内山地区の歴史的価値を指摘する。
史談会の武井会長は「戦後70年を機に調査した記録が次の世代に受け継がれ活用されるといい」とし、前会長で戦後70年の証言調査を企画した押田洋二氏(84)も「史談会の歴史に新たな1ページを記すことができた」と話している。
※足柄史談会【電話】0465・74・1036・武井会長
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