旅館の一室から被災地へ おひな様 宮ノ下の月廼屋旅館で200組を製作・月末に石巻へ
宮ノ下の月廼屋旅館で、ひな人形づくりの作業が続いている。布地を十二単(じゅうにひとえ)さながらに重ねた逸品は、古い着物を再利用しているせいか、色合いも一体ずつ個性的だ。
「還りびなと言ってね。本来は還暦を迎えた女性に贈るんですよ。還暦にはゼロ歳に戻るという意味もあるんです」。同旅館で働く茂村ひとみさん(宮城野在住・63歳)の特技は人形作り。これまで作っては来館者にプレゼントしていたという。
昨年3月、津波で家財を失った被災者を目の当たりにし、特技を通して何ができるかを考え、再生の願いを込めた人形200組を被災地に届けることを思いついた。作り始めたのが昨年7月。以来半年にわたって観光客や地元有志など延べ200人が作業に加わった。一気に作るのではなく、長い期間をかけて、作り続けることにこだわる。「被災地の事を忘れないよう少しでも長く意識していたいから」。完成すると一組ずつ箱に納め、手書きのメッセージを添えている。新聞で紹介されたことがきっかけで材料となる着物が集まるようになり「母から貰った着物を津波で失ってしまった。何とかひな人形を頂けないか」といった手紙も寄せられた。茂村さん自身、今月19日に仙台市にある3ヵ所の仮設住宅を訪問し、入居者とひな人形を製作している。23日現在、200組まであと数組と迫っている。月末には地元議員の手を通じ石巻市に届けられる予定だ。
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