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小田原城天守閣の館長・諏訪間 順さん 誰よりも城を知る男あす9時30分開門 城内はまるで歴史博物館

公開:2016年4月29日

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10カ月の工事を終え、いよいよ明日のオープンを待つ
10カ月の工事を終え、いよいよ明日のオープンを待つ

  1960(昭和35)年の再興以来初の大規模工事を経て、あすリニューアルオープンを迎える小田原城。この日を待ち望んだ一人が、諏訪間順さん(56)。奇しくも小田原城と「同級生」の天守閣館長だ。

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 耐震工事の段取りはもちろん、展示品の監修、大工たちとの折衝など、すべての差配に心を砕いた10カ月。「各分野のプロたちがうまくかみ合ってくれたからここまで来られた」と、オープンを控え、幾分表情も穏やか。

 城内の展示は、学芸員の資格を持つ自身の目から見ても「小田原城の歴史と北条五代の歴史が系統立てて知ってもらえるようになった」との自負はある。あとは明日を待つばかりだ。

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 自宅を新築した際、庭から出てきた土器や石器に胸をときめかせた少年は、中学の恩師との発掘旅行で、考古学に対する興味が芽生えた。高校は「どうしても野球をやりたい」と、教師の助言を振り切り吉田島農林高(現・吉田島総合高)の普通科へ。「高校教員になり、野球部の監督ができたらいいかな」という思いだったが、石器に触れ、古の人たちの暮らしを読み解く面白さに一層のめりこみ、大学は史学科を選んだ。

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 82年7月、御用米曲輪の発掘調査員に応募し、採用された。希望が叶い当時の文化財保護課に配属され、以来、小田原城との歩みは33年になる。

 黒曜石を通じた太古の人々の足跡を専門に研究し、2008(平成20)年には、旧石器時代の研究で権威のある「岩宿文化賞」を受賞した。7年前、文化財課から観光課城址公園係へ異動。天守閣館長を任ぜられた。小田原動物園とこども遊園地の園長も兼務している。

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 発掘や考古学、歴史好きなだけではない。実は幼少時から56歳になる今まで、変わらず続く趣味が「クワガタ採集」。無類のラーメン好きでもある。

 改修工事が始まって以来、連日続いた「午前さま」の生活。昼と夜、妻の手作りと自作の弁当を2つ持って出勤する日々は、ひとまず少し落ち着くだろうか。

 昨年7月からの耐震改修工事を終え、いよいよ明日5月1日、小田原城天守閣がリニューアルオープンする。午前9時のオープニングセレモニー後、9時30分から入場開始。

 新しい小田原城は、これまで以上に白さが際立つ外壁はもちろん、内部の展示も一新。戦国時代に初代・早雲から続いた北条五代の100年を中心に紹介する、現代的な歴史博物館に生まれ変わった。

フロア別にテーマ小田原と北条家の変遷

 新しい天守閣は、階ごとに展示テーマが設けられた。

 1階は「江戸時代の小田原城」を紹介。また、以前最上階にあったミュージアムショップが1階に移動している。(有)野澤作蔵商店の野澤尚和専務の一押しグッズは、小田原の四季や名所をちりばめたクリアファイルと、エポック社と共同製作した300ピースの小田原城パズルだ=写真。

 2階は「戦国時代の小田原城」。木のパネルに囲まれた「小田原城シアター」では、約7分の映像プログラムを2本上映する。俳優の苅谷俊介さんが四代・北条氏政に、合田雅吏さんが五代・氏直に扮する『北条五代百年の夢』は、初代・早雲から受け継いできた国づくりの理想「禄寿応穏」について2人が語るドラマ仕立てになっている。

 3階は「美術工芸と考古」。発掘調査で見つかった出土品が並び、遺構を再現したグラフィック前では写真撮影が楽しめる。4階の企画展示室を経て、天守摩利支天像が待つ最上階へと続く。

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