「16年前の初心に返り、熱意をもって4年を預かりたい」。5選の山口氏に終始笑顔は浮かばなかった。前回と同じ顔ぶれで投票率は35%と低迷した。天災や人口流出、税収減など大きな潮流に翻弄される箱根。はたしてこの選挙に有権者が頷く政策はあったのか。
選挙戦の演説で「16年前から少子化が懸案だった」という山口昇士氏(72)。現在は人口減対策として町内企業の「職住近接」に注目している。空家を活用し、幼保入園料金の第2子以降無料化などを挙げ、24年後の住民数を9千人維持する目標を掲げた。観光面では外国人観光客の受け入れ目標を200万人とし「外国人が一人で歩きやすい環境を作る」とした。固定資産税の増税については「帳尻合わせで楽な方法を選んだのではない、職員削減など乾いた雑巾をさらに絞ってきた」とし、国交付金が入らない苦しさも打ち明けた。
5選阻止を旗印に3度目の名乗りを上げた仙石有二氏(69)は町内をまわり「町全体が衰退したのは山口町政の罪」と批判、「トップが不変で職員の思考力が鈍っている」「増税も簡単な事、議会も甘い」と終始舌鋒鋭かった。大差で敗北したものの、前回比で票を減らした山口氏と対照的に得票は微増した。
「相手が違えば投票率が変わっていたかも。40%は超えてほしかった」(山口氏)。投開票当日は気温が低く雨がぱらつき、湯本地区の棄権率は約7割に達した。それでも投票所に訪れた町民の声には、町政よりも投票そのものへの意識の高さがにじみ出ていた。
「英国のEU離脱のいきさつをテレビで見て、行かなきゃと思った」「投票をさぼり、それが癖になったら嫌」「狭い町だから、行かないと近所にばれる」。増税やゴミ処理有料化などの懸案については、考え込み無言になる人が多かった。
子連れの母たちもいたが、町政への期待を語る人は少なかった。「不便だけど大自然の中で子育てできる環境は有難い、子どもが減っているのは他の市町も同じ」「大学生には町の通学費補助はなく、定期代だけで月数万円の負担。若者が町を去るのも仕方ない」。
5期目の首長は近隣に大井の間宮恒行町長がいるが、箱根では最長となる。「有権者が安定した町政運営を望んだ結果なのでは」(山口氏)。地域と地域が山々で隔てられ、同じ町内でもお互いがよく分からない。それらをまとめ上げるには、ある程度の行政経験が必要―という声も根強い。今後の4年間は後継育成にも注目が集まりそうだ。
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