オリエント急行客車 東海道線も走った
約30年前テレビ局企画で初来日
客車は1929年製のプルマンカーという一等車。壁面装飾をラリックが手掛けており、車内に大小合わせて156枚のガラスパネルが貼りめぐらされている。この動く芸術品が来日したのは、フジテレビが開局30周年を記念して企画した「オリエント急行日本一周」の一環だった。出発地はパリ。旧ソ連、中国など8カ国を通過し、船便で運び東京までの1万5千キロ以上を走らせた。
写真家の佐々木直樹さん(56)は根府川でカメラを構えた。欧州の豪華寝台列車が日本の風景を走るというのは「空前絶後の出来事」(佐々木氏)。多くのカメラマンが正面から車列を撮ろうとしていたが、佐々木さんは場所を変え太平洋を背景に客車を収めた。その後客車はいったんヨーロッパに戻り、2004年に同美術館が購入することになった。2度目の来日では沼津からトレーラーで引かれ、乙女峠を越えて箱根に到着した。
企画展では当時の写真計10点をはじめ、南仏行きのオリエント急行「コート・ダジュール号」の旅路や、それにちなんだラリック作品を紹介している。