箱根には学習塾が少なく、小田原に通うとなれば重くのしかかる交通費。バスの時刻も限りがあり、箱根っ子が学ぶ環境は他市町とは大きく異なる。そんな町内の3地区で小中学生を対象に無料の夜間塾を開く人がいる。
「地域で教育支えるべき」
通称「千葉塾」。会社経営者の千葉哲也さん(54)が、6年ほど前から続けるユニークな授業に出席してみた。社会教育センター(二ノ平)の一室で、子どもたちは算数パズルや英語などそれぞれの課題に取り組んでいた。千葉さんは机の間をせわしなく動き、白板に数式や英語の疑問文を走り書きする。
「コンビニで『温めますか』は何て言う?チンじゃないよ」。そんな質問から始まり分子の振動で温めるレンジの原理や、そのルーツが軍事技術だった歴史も話す。眠る子はいなかった。「部活の後で机に突っ伏してしまう子もいますが、そっとしておきます」(千葉さん)。
千葉さんはみずから企業を立ち上げ、14年前に自然に囲まれた箱根に移住した。大学時代に学習塾でアルバイトをしていた経験もあり、受験を控えた長女(当時中学生)を教えようと思ったのが千葉塾のはじまり。「どうせなら友達も連れておいで」の一言から、口コミで広がり今の規模になった。千葉さんが塾を続けた理由は別にある。当時湯本小のPTA副会長も務め、家事や子育てに疲れた保護者の姿を垣間見ていた。「自分が塾で教える時間、親は子育てから離れて気分転換できるのでは」。そんな発想もあった。
2時間以上立ったまま教え、喉が枯れてはペットボトルの茶をすする、の繰り返し。授業がない時も時折保護者の携帯には千葉さんからメールが届く。「勉強をする間だけはテレビを消して下さい」等々…家庭で勉強する環境を作ってもらうため、言いたい事は言い続けた。「歯磨きをする洗面所の壁に英単語を貼ってもいい。家族での外食先で、金額の計算を話題にすることもできると思います」。
志望校への進学が難しかった教え子が合格を果たしたり、就職して元気でいる事が千葉さんの原動力。目標は、年間300時間、60歳まで教えること。「地域で教育を支えなければ。町も無策ではないと思うが、その取り組みを待っていられなった」。塾の終了まで6年。その後は決まっていない。
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