中学生の硬式野球チーム秦野シニアの監督に就任した 井関 脩さん 茅ヶ崎市在住 51歳
全ては子供達のために
○…新指揮官として、グラウンドで白球を追う子どもたちに、今日も熱血指導を続ける。春季大会に向けた練習の余韻が残るマウンドを眺めながら「また自分の足でグラウンドに立てるのは…、感慨深いね」と、目を細めながらつぶやく。
○…3年前、くも膜下出血で倒れ3日間の意識不明。一命は取り留めたが、自分の足で立つこともできない状態だった。湘南工科大学附属高校野球部で21年間監督を務め、春・夏の神奈川県大会で5回のベスト8、11回のベスト16に導き、県の高校野球界では知られた存在だっただけに、入院先には多くの教え子が駆けつけた。「最初はもうダメだと思っていた。でも、家族や教え子が車椅子を押してくれる。気が立って来るなと怒鳴っても来てくれる。本当に助けられた」。折れそうな心に、力強い火が宿った。「もう一度ユニフォームを着たい、くたばってたまるか」。その一心でリハビリを開始。看護士に止められながらも歩く練習を重ね、退院時には松葉杖で歩けるまでに回復し、真夏には、あえて炎天下を4時間以上も歩き、体力の回復に努めた。
○…順調に感覚を取り戻しつつある時、秦野シニアから監督になってほしいと声が掛かる。「嬉しかった。ブランクがあるのに、必要としてくれる人がいる」。苦しい入院時、車椅子と共に復帰への背中を押してくれたのは、自身の宝である教え子たち。「これからは、子どもたちを育てるために全力を尽くそうと決めた」。満面の笑みに、病の影は微塵も感じない。
○…練習ではまず自分自身が打って、投げる。「偉そうにふんぞり返って座っているようなのは嫌」という指導方針は、今も昔と変わらない。「今でも指導の方法は、これで完璧とは思わない。言わんとすることをきちんと伝えるために、当たり前のことを当たり前に言う。これがモットーかな」。照れ笑いの中に、体全体で子どもたちと向き合う名監督の風格が漂う。
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