はだのっ子 いま・みらい 教育寄稿第39回 暗示は勇気と意欲を増進する 内藤 美彦
「釘抜きで舌抜く閻魔の恐ろしく嘘言えぬ子になりにけるかも」というある著名な人の歌があります。幼い頃「嘘をつくと閻魔様に舌を抜かれるぞ」と言われたことが、いつも頭の隅にあって嘘を言えなかったという述懐です。「誰も見ていないと思っても、悪い事をするとお天道様が見ていて、必ず罰があたるよ」と教えられて、悪い事をしようとした時、それを思い出してしなかったという人もいます。
こういったことを、大人が子供によく言ったものです。今の子供は、ほとんど聞いていないと思います。言う方が、あまりに非科学的なので抵抗を感じたのでしょう。でも、子供にとっては、悪さへの抑止力としての働きがあるのです。
医師が、薬理効果のない乳糖や澱粉を「この薬は新発見されたもので、値段も高いがよく効く薬だ」と言って投与すると、実際に症状が和らいだり、治ったりします。これをプラシーボ(偽薬)効果と呼ぶのだそうです。実験の結果、3分1は効果があると言われています。民間療法や健康食品の効き目も、この効果による可能性があるようです。
このように、思い込むということは、意外な力を発揮いたします。運動選手は試合に臨む際、勝つために「髭をそらない」といったような「験(ゲン)をかつぐ」ことが多いようです。
メルボルン五輪の2百m平泳ぎで、世界新記録で優勝した田口信教選手の言葉を覚えています。「練習もやるだけやり、技術にも自信はある。金メダルを取るには、あとは神の心次第だ。神に嫌われない生活をしようと心掛けた。そのために、精神的に安定した状態でスタートできた」と。
暗示をかけるということが、いかに効果をもたらすかという例です。占いに興味を持つ人が多いですが、自分に都合の良い所だけを信じれば、生活を楽しくします。黒柳徹子は、失敗や悪さをした時「君は、本当はいい子なんだよ」と校長に言われたそうです(「窓ぎわのトットちゃん」)。
よき暗示は、人としての道を誤らせず、勇気を与え、目標達成に効果があります。冒頭の言い伝えも、暗示の一種でしょう。これらや諺、格言を掘り起こして使うことは生活を潤します。特に、幼児期の暗示は必要です。
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