秦野警察署菩提駐在所勤務の警察官・大森辰夫さん(62)が2月いっぱいで辞令を受け、駐在所勤務を降りる。大森さんは警察官として44年間務めた。同駐在所には2001年に赴任し、菩提地域の住民の安全を見守ってきた。「赴任当初は地域の中で戸惑うこともあったが、北の人たちはあたたかい人ばかりだった」と菩提での12年間を振り返る。
大森さんは栃木県の那須出身。農家に生まれ、厳格な父の元、育てられた。子ども時代の夢はカーレーサーになること。しかし、高校生のとき、父を慕いよく実家に遊びに来ていた近所の駐在所の警察官から、警察学校への入学を勧められ、悩んだ末にレーシングカーではなくパトカーを選んだ。大森さんはこれまでパトカーへの誇りと、仕事への責任感から日々点検を怠らず、勤務中の事故は0。「緊張感を持って走るよう心掛けていた」という。
菩提へ赴任する前までの約30年間、凶悪犯罪の捜査本部で犯人を追うような命がけの仕事も数多く経験した。50代で体調を崩して入院した際、それまでを振り返り「初心に戻って人との信頼関係を築く仕事がしたい」と考え、駐在所勤務を志願したという。
「駐在さん」として
駐在所では元警察官の妻・裕子さん(61)と暮らしてきた。大森さんいわく、「妻は相棒」。大森さんが不在のときには、訪れた人の話を裕子さんが代わりに聞き、時には相談に乗ることもあったという。
赴任して10年ほど経った頃、問題行動を起こしていた中学生の家へ毎日家庭訪問を行い「高校へは行かないと」と勉強を促したこともあった。「翌年の春、高校に受かったと笑顔を見せてくれたときには嬉しかった」と大森さんは話す。
次に同駐在所へ赴任する後輩へのメッセージとして、大森さんは、「まずは菩提住民の一員として地域にとけ込むこと。制服を身に付けていなくても顔で分かってもらうようになることが大切」と話す。
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