4月4日から文化会館で「秦野名水・酒文化と通い徳利展」を開催する 横溝 彰さん 今泉台在住 67歳
好きなもの、とことん
○…通い徳利に魅せられて約35年。今ではおよそ260個もの徳利や甕(かめ)が軒先や部屋にずらりと並ぶ。一升瓶や紙パックが普及する前、酒屋が酒を入れて客に貸し出した通い徳利。興味を持ち始めたのは大日本印刷に就職し、パッケージのデザインを手掛けるようになった頃だ。かつて『印(しるし)物屋(もんや)』という徳利や盃などへ文字入れを行っていた職業があり「これがパッケージのルーツだ」と感じた。
○…今泉上町のタバコ生産農家に生まれた。早くに父を亡くし、母や兄弟を手伝って畑仕事に勤しんだ子ども時代。もともと歴史が好きで、郷土地理研究部に所属していたという。就職後に広島へ転勤となり、神奈川で馴染みのあった美濃高田焼の白色徳利ではなく、丹波や有田、焼酎用の須佐焼徳利などに出会い、その多様性に驚いた。「この多様性こそ日本の文化ではないか、と感じました」と魅力を語る。
○…興味を持ったらとことん。凝り性な性格もあり、仕事の傍ら、通い徳利の収集や研究を始めた。徳利をきっかけに焼き物にも興味を持ち、徳利に書かれた文字を頼りに窯元を突き止めたことも。「調べてみると、市町村合併で今はなくなってしまった地名もたくさんある。失われたものを思い出すきっかけになっているんです」。好きなものを楽しそうに語る言葉が、湯水のように湧いてくる。
○…広島で18年を過ごし、東京から大阪、名古屋へ転々とし、生まれ育った秦野へ戻ってきた。2人の子どもも独立し、今は妻と2人暮らし。改めて秦野を見つめ直し「水の美味しさは格別。この美味しい水を飲み続けるために環境を維持することが大切」と真剣な表情で語る。徳利に入れる酒にとっても水は命。「展示を通じて様々な事に気付いてもらえれば」。展示に向け、手を貸してくれる旧友にも恵まれた。「本当にありがたい」と微笑む。一度離れたからこそ見えた故郷の素晴らしさを伝える。
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