第32回「日本の自然」写真コンテスト(主催・朝日新聞社、全日本写真連盟、森林文化協会)で写真家の市川節子さん(秦野市堀西)の作品「興味津々」が最優秀賞に輝いた。受賞作品は6月4日の朝日新聞に大きく掲載された。
「いつまでも守り続けたい日本の自然」がテーマの同コンテストには全国から4986点の応募があった。
自然を題材に20年以上撮り続けている市川さんが出展したのは、近隣の神社境内で撮影した生後1カ月程のアオバズク。繁殖のため4〜5月に南方から渡ってくるアオバズクが同神社のタブノキの洞で育っていることを知って以来、15年間毎年通い続けている。市川さんはアオバズクに「今年も来てくれたのね、ありがとう」と思ったという。
昨年7月末、神社には市川さんの他に撮影者が3人いたが、撮影者の多くはエンジェルポーズと呼ばれる翼を広げた姿を捉えようとしていた。市川さんも狙ってはいたが、500㎜の望遠レンズをつけた愛機のファインダー越しにアオバズクを見ていると、そこへ枝を這ってきたアブラゼミが出現。四角く切られた世界の中でのアオバズクとアブラゼミの命の共演に、市川さんは「ドキッとして、ふわっとして」と当時の心境を興奮冷めやらぬ様子で語る。15年通い詰め、初めて出会えたときめきの瞬間に夢中でシャッターを切った。
アブラゼミはアオバズクの餌。幼鳥はまだ自分で餌を捕れず、親鳥が捕ってくるものを与えられる。アオバズクの幼鳥にとっては、「これは何だ?見たことがあるような。食べてもいいのかな?と思っていたのかも」と市川さん。瞳孔を縮ませ、首を突き出し、アブラゼミを食い入るように見つめるアオバズクの姿は作品名「興味津々」となった。
濃縮の1枚裏に「努力と感謝」
この1枚には、自然界の教えが濃縮されているという。幼鳥には初めてづくしの外界で出会った「獲物」から繋がる食物連鎖という摂理。また、写ってはいないが、幼鳥の上では親鳥が外敵に目を光らせており、見守る「親子関係」があってこそ、子どもが安心して生きていけるのだという。
これまでの受賞は数知れない市川さんだが、最高賞を取ったのは今回が初めて。「今までコツコツ積み重ねてきた努力が実りました。生き物と向き合ってきて本当によかった。撮影機材、技術や、アオバズクの事を私に教えてくれた方々がいてくれたからこそこの写真を撮ることが出来ました。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。これを機に初心に戻って小さな自然を見つめ直し、心を養っていきます」と話した。
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