秦野版 掲載号:2017年1月12日号

秦野市千村地区

「八重桜の里」存続へ課題 社会

摘み手の高齢化進む

摘み取り作業をする桜花農家(2012年4月)
摘み取り作業をする桜花農家(2012年4月)
 秦野市千村地区は「八重桜の里」として知られ、全国有数の食用桜花の産地。しかし近年は、摘み取り作業者の高齢化や人手不足の問題に加え、桜の樹木が10m以上に成長し摘み取りには高くなり過ぎることも課題となっている。農家からは「このままでは桜の摘み取りが途絶えてしまうのではないか」と懸念する声も上がっている。

 千村地区では古くから八重桜が多く自生していたとみられ、江戸時代末期から地域の祭り費用を賄うために、花を収穫し塩漬け加工して売り始めたと言われている。戦後、各農家が植樹をして、現在では同地区内で約130軒の農家が2500本ほどを栽培している。桜漬けは、結婚式などで出される桜湯や、菓子やパンに使われる。

 秦野市の八重桜の年間出荷量は15〜20トンほどで全国シェアの7〜8割を占めると言われる。塩漬け加工まで行う農家は減り、現在では小田原の漬物業者などに収穫したまま卸す農家が多い。

 多く栽培されている品種は30〜50枚の花弁を持つ「カンザン」。毎年4月中旬から2週間ほど花が咲き、摘み取りもこの期間中に行う。知人や親戚で協力して花の咲いた樹木から順に総出で収穫していく場合もあるが、年によっては1〜2日で次々に咲いてしまうこともあり、より多くの人手を必要とする農家も多い。

 八重桜は50年以上花を咲かせる木もあるが、上の方の枝を切ると花が咲かない枝が生えるため、高さを抑えるための剪定が難しい。高さ10mを超えると年配者には危険も伴う。新たに幼木を植えるにも場所の確保が課題となっており、収穫可能な状態まで育てるにも時間がかかる。

 食用のため病気になっても残留性の農薬は使えないなど、新たに若木を育てていくにも一定の制約がある。病気が広がり立ち枯れした樹木の畑もあるという。

熟練者育成には経験が必要

 摘み取り作業は、はしごを枝に結い、両手で丁寧に摘むのが基本。収入は原則出来高で、短期間でより多くの花を摘むために、すぐ移動できるよう命綱をつけない人もいるという。木にはしごを固定する紐は、ほどきやすくかつ頑丈に縛る。

 こうしたスキルを習得するには経験を積む必要があるが、収穫時期は短く、農家にとっては繁忙期で、指導に時間をかけにくい。県外からのボランティア希望者もいたが、1回きりの参加では次に繋がらず、若者などの体験希望者が万が一落下した場合の保険料を誰が払うかなどの課題もある。

 千村の桜花農家、小野孝允さん(71)は「80歳を超えたら、はしごには登るのは難しく、10年先は自分も今のように花をもげるか分からない。毎年手伝いに来てくれる人がいれば助かる農家も多いはず」と話す。

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