宮地伸吾医師(精神科・心療内科 診療部長)
100人に1人の割合でかかるとされる統合失調症。患者さんのなかには、複数の抗精神病薬の服用を一定期間続けても、「幻聴に悩まされる、自傷他害の恐れがある、引きこもって何もできない」など、統合失調症により引き起こされた状態が長引く、「治療抵抗性(難治性)」統合失調症の人がいる。
秦野厚生病院(坂井喜郎院長)がこのほど、治療抵抗性統合失調症の治療薬「クロザピン」の使用登録病院になったと知り、宮地伸吾診療部長に話を聞いた。
―クロザピン治療とは
「クロザピン」は世界97カ国で使用され、日本では2009年に認可され使われ始めました。治療効果が評価されている薬ですが、無顆粒球症等の副作用が報告されているため、治療はCPMS(クロザリル患者モニタリングサービス)に登録された医療機関、医師のみで行われています。登録医療機関は全国で約400、神奈川県西部では当院が初登録になります。
―治療への流れなどは
外来受診をしていただき、問診や検査でクロザピン治療が可能かどうか判断します。詳しい説明を受けた後、治療への同意が必要になります。副作用の早期発見や早期対応のため18週の入院、治療中は定期的な血液検査があります。現在当院では3名が治療中で、先に始めた方はコミュニケーションが取れ出すなど良い兆しが出てきています。
* * *
急性期病棟で集中治療
精神科病院は長期入院のイメージが強いが…。同院では「最近では6割の方が3カ月で退院。1年以内では9割が退院。急性期病棟に関しては8割程度が3カ月で退院しています」と紹介する。「就労支援」にも力を入れており、院内のデイケアで就労支援グループを設けて、秦野厚生病院での雇用を促進している。厚労省が企業に義務付けている障害者法定雇用率が2・0%のところ、同院では9・9%の高さを示す。