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歴史探偵・高丸の「あお葉のこと葉」ファイル vol.3 「谷戸 後編」

掲載号:2020年3月26日号

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 丘陵地が雨や湧水等の浸食により形成されたヤト地形。神奈川県ではヤト(谷戸)と呼ぶが、東京湾の対岸の千葉県ではヤツ(谷津)と呼び、県の大半を占める。

 東京は渋谷、四ツ谷など戸も津も付かないヤ(谷)一文字。と、思いきや。それは府内(江戸の市街地)に限ったことで、その外側はヤトが多く、若干だがヤツも混じっていた。

 埼玉県も含めた北関東も同様にヤト、ヤツが混在するが、さらにそこへヤチ(谷地)が加わる。谷地は東北地方では馴染みのある言葉。民俗学者の柳田國男氏によるとアイヌ語起源で沼沢や湿地を意味する言葉らしい。

 雨や湧水による侵食でできたヤトもほとんどが湿地帯。もしかすると湿地を意味する広義のヤチが、東北から関東に下りてくる過程で狭義のヤツ、ヤト、ヤに変化していったのかもしれない。

 神奈川はほぼヤトだと書いたが、かつての武士の都・鎌倉だけは違っていた。扇ガ谷(おうぎがやつ)、亀ヶ谷(かめがやつ)など歴史に登場する地も含め、ヤツ地名が50以上。ヤト地域である横須賀、逗子、藤沢に囲まれるようにしてヤツら(・・・)は鎌倉を占拠していた。

 いや、1ケ所ほころびがあった。横浜市金沢区だ。鎌倉の出入り口の一つ、朝比奈の切通しから鎌倉幕府の外港・平潟湾(金沢八景)へ抜けるルートにヤツらはいた。港の先は房総半島…なるほど、義朝だったか!

 源義朝…頼朝・義経の父親である。彼は房総半島で少年期を過ごし、土地の豪族から「上総御曹司」と呼ばれていた。その後、拠点を移して住んだのが鎌倉の亀ケ谷。つまり、房総半島からヤツらを連れてきたのは義朝!…に違いない。そう結論づけようとしたら、小田原にもヤツ地名が散らばっているのを見つけてしまった。う〜ん、ヤット(谷戸)謎が解けるところだったのに!厄介なヤツ(谷津)だ。

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