コラム「学校と社会をつなぎ直す」㉝ アナログを基盤にデジタル化促進 桐蔭学園理事長 溝上慎一
GIGAスクール構想が積極的に進められている。スマホやタブレット等日本の子どものICT利用は低くはないが、学習への活用はOECD加盟国の中で下位に位置していたことに危機感をもっての国策的対応である。このような教育DXの利活用は、子どもだけでなく、採点やデータ管理、働き方改革など、教員の仕事や学校運営を効率的に進めるためにも促されている。これらの推進は喜ばしいことだ。
他方で、子どもの世界でデジタル化が行き過ぎていないかという懸念がある。手書きで学習する姿が小学校から消えていっている全国の様子は代表的な問題であり、やり過ぎだと感じる。年齢にもよるが少なくとも小学校中学年が終わるくらいまでは、アナログ学習を基盤としながらデジタル化を促進するくらいの程度にすべきである。
大人の世界で手書きはほとんどないので、子どもにも必要ないといった考えが専門家から出てくることがあるが、それは間違いだ。かつてルソーが示したように、子どもは小さな大人ではない。子どもには子ども独自の発達的力学があって、この点を絶対忘れてはいけない。大人と同じように作業していては彼らの知性は発達しない。子どもは手や体を動かして身体全体で経験することを基盤とし、文字の世界へ参入して知性を発達させるのである。このようなことが最近気になっている。
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